愛犬に安全なドッグフードを食べさせたくて、フードについてネットを検索したことがある人なら、4D材料(4Dミート)というワードを見たことがあると思います。
ネット上では4Dミートを原料に使用しているドッグフードは悪いドッグフードの見本のような扱いがされていて、与え続けると健康を害するどころか病気になって死んでしまうようなことさえ書かれています。
4Dミートはそれほど危険なものなのでしょうか?
その実態について調べてみました。
Dr.ノブ
後述するレンダリング素材の原料になります。
タロ
目次
4Dミートの4Dとは、
- DEAD「死亡した動物の肉」
- DISEASED「病気だった動物の肉」
- DYING「死にかけだった動物の肉」
- DISABLED「障害があった動物の肉」
という意味の4つの単語の頭文字Dから来ているものです。
どれも体に悪そうな肉で、愛犬に与えるドッグフードに入っていて欲しくないと感じるのも無理はありませんね。
4Dミートは人間が食べる食肉では問題にされることはありません。
食肉加工の際に出てくる食肉以外の部分を加工(レンダリングといいます)して飼料やペットフードなどに有効利用するするのですが、その際に4Dミートが混ぜられているとして問題にされています。
”4Dミート”という名称は正式なものではなく、レンダリングビジネスを批判するための俗称のようなものです。
4Dミートがドッグフードに混入しているのは本当なのか?ここでレンダリングについて解説しておきます。
家畜を食肉用に加工すると肉以外の部分の骨、皮、内臓などいわゆる肉副産物と呼ばれる部分が大量に余ります。
食べられない部分や内臓などのあまり需要のない部位を熱加工して、脂分や固形分(肉粉)を飼料や肥料などに有効利用する工程のことをレンダリングといいます。
レンダリングのもともとの語源は食肉加工で余った部分から脂肪分を抽出することを意味しますが、脂を抽出した後に残る肉粉や肉骨粉などもレンダリング製品に含みます。
以下は日本でのレンダリングの模式図です。

引用:日本畜産副産物協会
レンダリングで使用される材料の多くは、食肉加工場で出る畜産副産物です。
食肉加工場は厳重に管理されているので、牧場で死んでしまった家畜や病気の家畜などが混じることはありません。
それなのにレンダリングで作られたチキンミールやポークミールなどの素材には、ネットで批判されているような4Dミートが本当に混じっているのでしょうか?
4Dの一つ一つを検証してみましょう。
食肉加工する時には屠殺されるので、死亡していない動物の肉が出回ることはありません。
この言葉が意味するのは屠殺以外で死亡してしまった家畜を利用しているという意味です。
日本では農林水産省が出した通達の資料を見ると実態がわかります。
以下がその資料です。
残念ながらドッグフードには、農場で死んでしまった家畜をレンダリングの原料に使うことが、しっかりと図に描かれています。
畜産が盛んなアメリカでは、状況はもっとひどいようです。
以下は日本のレンダリング業者がアメリカのレンダリングについて書いたコラムの一節です。
国の経済、そして、衛生にとってのレンダリング業の不可欠な重要性は、国中のあらゆる階層の良識のある人々には明白だ。常識ある人なら、地域のレンダリング業者が定期的に家畜の死体や廃脂や骨を集めてくれるので公衆衛生が保たれていることを理解してくれる。
しかし、米国のレンダリング業者が毎日毎日集める材料、集めなければ路上で積み重なって、腐っていく材料が毎日3万6千トンという膨大な量であることを知っている人はほとんどいない。
レンダリング業者のトラックが肉屋や食肉センター、そして食料品店などを毎日まわって(しかも代金を払って)屑脂や骨や肉のスクラップを集めていることを知っている人はあまりいない。また地域の農家や畜産家が電話でレンダリング業者を呼んで動物の死骸を引き取らせていることを知っている人もほとんどいない。動物の死骸を引き取ってもほとんどレンダリング業者は採算は合わないのが普通である。しかし引取り用のトラックは最近では無線で連絡がとれる最新式のものが多い。このような毎日の業務がどこの地域でもどうしても必要であり、公共衛生を万全に保つためにレンダリング業者の存在は不可欠なのです。
引用:富士化学株式会社「レンダリング工場が閉鎖された日」
このようにアメリカでは死亡した家畜をレンダリングに利用するのは当たり前で、その量もかなり多いようです。
日本のレンダリング業者が公式ページに書いているのでおそらく本当のことでしょう。
ヨーロッパでも国によって違いはあっても、状況はあまり変わらないでしょう。
4DのDEADは本当のようです。
病気だった家畜が使われているという指摘はどうでしょう?
これも農場で死亡した家畜を原料として使っているのなら、病気の家畜が混じってしまっている可能性は高いと考えられます。
牧場で病気を発症して治療を受けていたのなら、良心のあるレンダリング業者なら飼料用に使わず、肥料や工業用に回すかもしれません。
しかし、家畜は突然死んでしまうことも珍しくありません。
大量死したなら別ですが、家畜は経済動物なので散発に死んだ家畜の死因をわざわざ調べるようなことはしないので、見た目に問題がなさそうなら躊躇なく飼料用レンダリングに回されるでしょう。
BSE陽性なら焼却処分されます。
また、国産のミートミールには病死や斃死した牛が混じることはありません。
>>>ドッグフードの原料に使われるミール類とは?
でも実際は感染症であったかもしれません。
故意ではなくても病気の家畜が混じってしまうことは普通にあると想像できます。
アメリカでは前述のコラムからすると、普通に病気の家畜を利用していそうですね。
なので4DのDISEASEDも本当でしょう。
日本では病気の家畜を食肉加工に使用することはありません。
なので、死にかけた家畜が食肉加工ルートでレンダリングに使われることはないでしょう。
牧場からレンダリング施設に直接送るのは死亡した家畜に限られますので、やはりこのルートでも死にかけた家畜をレンダリングに使用することはありません。
死ぬのを待ってから送ることになるでしょう。
なので、4DのDYINGはダウトです。
元の情報の真偽は定かではありませんが、もし本当であってもかなり古い情報なので、さすがに今の時代では生きたままというのはないと思います。
DISABLEDというのは知的あるいは身体的な障害があるということですが、家畜なので体に障害があるということに限られます。
先天的に障害がある場合と後天的に外傷によって障害を持つ場合がありますが、どちらも病原菌を持っているわけでも内臓に異常が出ているわけでもありません。
病気の家畜をレンダリングの原料として使うことがあるのなら、障害のある家畜を利用しない理由はないでしょう。
よって4DのDISABLEDというのは本当だと考えられます。
上に書いたように、4Dミートのいくつかはレンダリングに使われている可能性があります。
しかし、4Dミート全般に言えることですが、
「レンダリングに使っている=ドッグフードに使われている」ではありません。
ドッグフードに4Dミートが含まれている可能性はありますが、後述するようにレンダリングでは肥料用や工業用の固形タンパク質も作っています。
たとえ4Dミートを使っていたとしても肥料や工業用に使われているだけかもしれません。
必ずしもドッグフードの原料になっているとはいえないのです。
ペットフード安全法により、ドッグフードのパッケージには国産はもちろん輸入品であっても原材料表示をしなければなりません。
しかし”4Dミート”と称される原材料が使われていてもこの呼び名は俗称なので、”4Dミート”という表示がされているわけではありません。
どのような表示になっていると4Dミートが入っている可能性があるかというと、
- 鶏は家禽ミールやチキンミール
- 豚はポークミール
- 牛はミートミール
- ミート・アンド・ボーン・ミール(肉骨粉)
などと表示されていると4Dミートが使われている可能性があります。
また、日本のミートミールには4Dミートが入っている心配はありません。
>>>ドッグフードの原料に使われるミール類とは?
一般に市販されているポピュラーなドッグフードには、これらが使用されているものが多くあります。
なお、チキンミールなどの呼称は製品によって変わります。詳しくはこちらの記事で説明しています。

飼い主さんからしたらドッグフードに4Dミートを使用しているというだけでも気持ちのいいものではないですよね。
ところがレンダリングを批判しているドッグフードサイトの中には、犬猫の死体が原料に混じっているという衝撃的なことを書いているところがあります。
その手のサイトが主張するのは、アメリカでは交通事故で亡くなったり動物保護施設で安楽死された犬・猫の死体をレンダリングして、ドッグフードやキャットフードに使うミール類の原料として用いているというものです。
間接的な証拠としてサンフランシスコだけで月間200トンもの犬猫の死体が処理されているという例を挙げているサイトもありました。
どのサイトもほぼ同じ内容で、Occupay for Animals!というアメリカの動物愛護運動を行っているサイトと、15年以上前に書かれたアメリカの食品加工の裏側を暴露する本がネタ元のようです。
本はもうかなり古いので情報として当てにはなりません。
Occupay for Animals!の方は該当する記事を読んでみると、2010年に書かれたものなので情報としての鮮度はまだ落ちていないものです。
そこでその記事をよく読んでみると、ライターの人はペットフードに犬猫の死体を使っているということが事実とはひとことも言っていませんでした。
冒頭に、動物病院や動物保護施設が犬猫の死体をペットフードにするためのレンダリング施設に引き取ってもらっているという都市伝説を紹介し、実際に持ち上がった疑惑とそれに対する調査やその結果に対する自分の推測を書いているのです。
要点は次のようなことです。
アメリカのレンダリング施設は食肉加工場や牧場の他に動物保護施設や肉屋、小売店などからも材料を集めている。
動物病院や動物保護施設では安楽死にバルビツールという麻酔薬を使用する。
獣医師の間での逸話として麻酔薬(バルビツール)が効きにくい個体がいる。そしてその理由として食べているペットフードにバルビツールが少量混じっていて耐性ができてしまうのではないか?という仮説があった。
そのためバルビツールが混じるのはペットフードに安楽死された犬猫が使われているのではないかという疑惑が持ち上がったのです。
そしてアメリカ食品医薬品局(FDA)によって実際に調査が行われました。
2度の調査でドッグフードからバルビツールが検出された。
これで一気に疑惑が深まったのですが、さらに詳しい調査としてドッグフードに犬と猫のDNAが含まれているかどうかの調査が行われました。
非常に感度の高い検査にも関わらず、どのドッグフードからも犬と猫のDNAは見つからなかった。
この結果からFDAはドッグフードに犬猫が入っている可能性はないと結論づけました。バルビツールが混入するのは牛や馬が安楽死された時の薬が原因だろうということでした。
しかし、筆者は牛や馬の安楽死にコストのかかるバルビツールを使うはずはないと考え、FDAはうるさい自分たち活動家を納得させるためにそう結論づけただけで、いまだに犬猫がペットフードに混入されているのではないか?と推測しているのです。
このライターの推測を日本のサイトはあたかも事実として認定されているように書いているのです。
途中、レンダリング施設が動物保護施設から犬猫の死体を回収してると書いていますが、回収しているからドッグフードに使われているということにはなりません。
レンダリングは飼料用だけでなく、肥料用や工業用途の固形タンパク質も作っているからです。
ただし、業者がその気になればいつでもミールに転用できることから、疑惑がいつまでも収まらないのも事実です。どの世界にも悪いやつはいますからね。
昔はともかくさすがに今は、まともなメーカーのドッグフードに犬猫の死体が入っている心配はないでしょう。
犬猫の死体は別にしても、4Dミートが使われているというのは印象がいいものではありません。
今は安全性がうるさく言われ、ペットフード安全法も施行されているので、4Dミートを使用していても製品自体の安全性が損なわれるものではありません。
しかし、昨今はペットは動物と言えども家族同然に接する人がほとんど。
ドッグフードに4Dミートが使われていると知って、愛犬には食べさせたくないという人も多いでしょう。
自分に置き換えて4Dミートの入った食品を食べられるか?と考えると抵抗がありますからね。
いくら安全でも、そこは気持ちの問題です。

4Dミートがネットで批判されていることの一部は本当でした。
ただし、今の時代では安全性には問題がありません。
ワンちゃんに健康上の問題が出る心配はありません。
問題は飼い主さんが4Dミートを使ったフードを受け入れることができるかどうかの気持ちの問題です。
確実に4Dミートを避けたいのなら、コストはかかっても生肉だけを使用したドッグフードを選ぶようにましょう。