犬ではアトピーと食物アレルギーは違うものなのを知っていますか?

犬のアトピーと食物アレルギーの違い

診察をしていると飼い主さんの話で「あれっ」と思うことがよくあります。

転院してきた子に多いのですが

「うちの子はアトピーがあるのでアレルギー用の処方食を食べさせています」

「アレルギー用の処方食を与えているのに相変わらず痒がっている」

などという話で、食物アレルギーがあるのかとよくよく聞いてみると実際はアトピーのようなんです。

アトピーと食物アレルギーを混同している方が多くいるんですね。

実はこの2つは犬では別のものとして考えます。

知らなかった方はこれを機会にぜひ覚えておきましょう。

人間のアトピーと犬のアトピー

なぜこのような混同が起こるかというと、人間のアトピーと犬のアトピーでは定義が少し異なるからなんです。

人のアトピーはタンパク質のアレルゲン(タンパク質でないものがアレルゲンとなることもある)によってIgE抗体が産生されやすい傾向のある体質のことをいいます。

アレルゲンと合体したIgEが肥満細胞に結合すると化学物質のヒスタミンなどが放出されて炎症が起こり皮膚がかゆくなるのです。

なので食べ物によってIgEが産生される食物アレルギーもアトピーの1種として扱われます。

人のアトピー患者の3割程度は食べ物(小麦粉、牛乳、卵、ピーナッツ、大豆など)がアレルゲンとなって起こるとされています。

ところが、犬では食物アレルギーをアトピーとして扱わないのでややこしくなるんですね。

参考Wikipedia

犬ではアトピーは環境アレルゲンによるもの

犬の場合はアトピーに含まれるのは環境中に存在するアレルゲンによって起こるものに限定されます。

例えば

  • ハウスダスト
  • ノミ・ダニ
  • 草木の花粉
  • カビ

などです。

これらのアレルゲンが皮膚に付着することでアレルギー反応が起こり、痒みが発生します。

これが目や鼻の粘膜で起こると花粉症で人間ではとても多いですが、犬で花粉症が起こることはあまりありません。

食べ物で起こるアレルギーが食物アレルギー

食物アレルギーは食事中に含まれるタンパク質がアレルゲンとなってアレルギーが起こる病気です。

しかし、犬の場合は食物アレルギーをアトピーに含めません。

先ほども述べたようにアトピーとはIgEが介在するアレルギー反応が起こる体質のこと。

ところが犬の食物アレルギーではIgEが関連しないことが珍しくないのです。

ないわけではないのですが、たいていはIgEは関係ない。

だから、犬では食物アレルギーをアトピーに含めないのです。

IgEが関連するアトピーであれば即時反応するので場合によってはアナフィラキシーが起こります。

人でピーナッツアレルギーやそばアレルギーでアナフィラキシーを起こし、死にそうになったなんて話は有名ですよね。

でも犬の食物アレルギーでそんな話は聞いたことないでしょ?

それはIgEが関連するものが少ないためなんです。

実際にアナフィラキシーはあるのかもしませんが、専門医でも経験がないそうですから非常にまれなんでしょう。

Dr.ノブ

このため犬では食べ物のIgE抗体検査はあまり意味がありません。
代わりにリンパ球反応試験を行います。

治療法や予防法の違い

犬のアトピーと食物アレルギーではアレルギー反応の起こる経路が違うため、治療や予防に対しての効果が違ってきます。

アトピーの薬物治療ではステロイド、シクロスポリン、抗ヒスタミン剤などが主に使用されます。

しかしこれらの薬剤は食物アレルギーではあまり効きません。

Dr.ノブ

つまり、症状はアトピーのようなのに、これらの薬が効かない場合は食物アレルギー可能性が高いといえます。

さらにアトピーではシャワーやシャンプー、アレルギースーツなどが症状緩和や予防に効果的です。

しかし、食物アレルギーではこれらは2次感染の予防には効果はありますが、かゆみに対してはあまり効果は望めません。

食物アレルギーの治療と予防でもっとも効果のあるのは食事療法です。

その子のアレルゲンとなる食べ物を断ってしまえば、理論上アレルギーは起こりません。

低アレルゲンのドッグフードはアトピーには意味がない?

これまでのことから、冒頭に挙げたアトピーなのにアレルギーの処方食(療法食)を与えていたケースでは、処方食は意味がありません。

注意
ここでいう処方食とはヒルズのZ/dウルトラやロイヤルカナンのアミノペプチドフォーミュラのように、タンパク質を加水分解して理論的にアレルゲンをなくした治療のための食事のこと。

アレルギーの処方食は健康な子が食べても問題はないですが、めちゃくちゃ高いので食物アレルギーではないのに食べさせるのはもったいないです。

では、一般に売られている低アレルゲンフードではどうでしょう?

低アレルゲンフードとは、グレインフリーやグルテンフリーのほかタンパク質を工夫した低アレルゲンといわれる市販のフード。

これら低アレルゲンフードをアトピーの子に食べさせるのも無駄なのでしょうか?

いいえ、低アレルゲンフードを与えるのはむしろオススメします。

というのも、たとえ食物アレルギーを持っていても、軽い段階ではなかなか気づくことができません。

ましてや、アトピーのある子ではアトピーの症状と食物アレルギーの症状が混じってしまうので、食物アレルギーも併発していたことに気づかないことがよくあります。

食物アレルギーでみられる症状の特徴を解説!

アトピーと食物アレルギーは症状から区別できないくらい病変の分布や症状が似ているからなんですね。

このような飼い主さんも気づいていない潜在的な食物アレルギーを持っている子に、アレルゲンの入ったフードを与え続ければ、アレルギー症状を強くしてしまうことになります。

なので、低アレルゲンフードを食べさせるのは十分に意味があるのです。

食物アレルギーがはっきりしない段階では処方食を与える必要はありませんが、市販の低アレルゲンフードを食べさせるのは大いにオススメします。

動物性タンパク源ごとの低アレルゲンドッグフード一覧【アレルゲンを避けて愛犬快適】