ドッグフードの原料として、小麦を代表とする麦類や米・大豆・トウモロコシなど、穀物類が使われていることがよくあります。
安価な大手メーカーのドッグフードにはまず間違いなく小麦が入っていて、使っていない商品を探すのが大変なほどです。
でも巷では、穀物をワンちゃんに与えるとアレルギーになるという話や、消化に悪いう話をよく耳にします。
「犬は雑食なので問題なさそうだし製品にも堂々と使用されているのに、良いのか悪いのかいったいどっちなの?」
と迷ってしまいますよね。
結局、ドッグフードに穀物類は必要なんでしょうか?
この記事では穀物はアレルギーになりやすいのか?消化が悪いのか?という疑問にズバリ答えたいと思います。
Dr.ノブ
タロ
みなさんは「穀物」と聞いたら何を思い浮かべますか?
一口に穀物といってもたくさんの種類があります。
大辞林を引くと
【穀物】
農作物のうち、種子を食用とするため栽培されるもの。米・麦・粟(あわ)・稗(ひえ)・豆・黍(きび)・とうもろこしなど。多く、主食とされる。穀類。
引用:大辞林
と定義されています。
Dr.ノブ
おうちにあるドッグフードの原材料表示を見てみたら、このうちのどれかは入っているんじゃないですか?
でも、これら全部が巷で言われているように「アレルギーが起こりやすい」、というわけではないのです。
注意しないといけないのは小麦。
人でもそうですが、小麦はワンちゃんでもアレルゲンとなりやすい食品として知られています。
一方、米(コメ)はヒルズ社が出しているアレルギー用処方食のd/dの原料として以前に用いられていたくらいなので、アレルギーが起こりにくい食品の1つです。
また、とうもろこしも炭水化物源としてコーンスターチが、アレルギー用フードによく使用されていますからアレルギーは起こりにくいと言えます。
Dr.ノブ
とうもろこしに対してアレルギーを持っているワンちゃんは実際にいますのでアレルギーを起こす可能性はないとはいえません。
他の穀物でもあまりアレルギーが出やすいという印象はありません。
気をつけるべきは小麦などの麦類です。
これらはグルテンというタンパク質の複合体を作り、アレルギーで皮膚のかゆみや下痢の原因になることがあるのです。
なので麦類の入ったドッグフードはアレルギーを起こしやすいと言えるでしょう。
Dr.ノブ
犬でもアレルギー検査で小麦は定番ですが、大麦・ライ麦は項目にも入っていません。
ただし交差反応といって、小麦に対するアレルギーを持っていると、大麦やライ麦など別種の麦でアレルギー反応を起こす可能性が2割ほどあります。
そこでプレミアムドッグフードの売りの1つとして、グルテンによるアレルギーを防ぐ目的で作られたのがグルテンフリーのドッグフードです。
あくまでも小麦は他の食品に比べて食物アレルギーが起こりやすいというだけです。
食べたら必ずアレルギーになるわけではなく、食べても平気な子はいくらでもいます。
反対にアレルギーになりにくい食品でも、食物アレルギーを起こすこともあります。
なのでグルテンフリーのフードを食べていても食物アレルギーを確実に予防できるわけではありません。
なりやすさとその子の体質の問題なので、今、小麦の入ったドッグフードを食べていて何も問題ないのなら、グルテンフリーに変えないといけないわけではありません。

犬は肉食だったものが人に飼われることで雑食になったので、穀物類はうまく消化できないとよく言われます。
だから穀物類を使用したドッグフードは良くないのだと。
確かにワンちゃんには植物類の消化は苦手です。
ミカンを食べたらつぶつぶがそのまま出てきたり、とうもろこしを食べて粒のまま出てきたりということはよくあります。
だからといって、「穀物入りのドッグフードは消化が悪い」ということにはならないんです。
その主張にはごまかしがあります。
だって、ドッグフードには穀物が生のまま入っているわけではありませんからね。
メーカーが消化の良いように工夫して加工しているので、消化できないということはありえません。
むしろ消化率は高く、加工された穀物の犬の消化率は99%にもなるのです。
穀物の入ったドッグフードは消化が悪いのか?について詳しくはこちらをご覧ください。

ただし、穀物が消化に問題はなくても下痢の原因になることがあります。
それは消化が悪くてということではなく、アレルギーによる症状だと考えられます。
アレルギーというと痒みが出るものとばかり思われがちですが、実はアレルギーによる下痢は珍しくないのです。
生物にとって炭水化物(糖質)は重要なカロリー源となり、活動するために不可欠な栄養素です。
肉食から変化してきた犬は、健康を維持するために炭水化物をかなり必要とします。
パンダが今さら肉食にもどれないように、犬も今さら肉食オンリーというわけにはいかないのです。
犬の炭水化物の必要量は下のグラフのように人と猫の中間的な数字になります。
必要量を摂取するのに炭水化物を多く含む穀物類は都合がいいので、ドッグフードには小麦・米・トウモロコシなどがよく使われているんです。
アレルギーを起こす確率が高くなるのならグレインフリー(穀物類不使用)のドッグフードを与えたいという気持ちは当然ですが、みんながアレルギー体質があるわけではありませんし、必要な炭水化物を摂取できなければまたそれも問題です。
でも、炭水化物を穀物以外で摂取できるなら、穀物を使う必要はありません。
そこでプレミアムドッグフードでは、穀物以外の植物原料を使って必要な炭水化物をクリアして低アレルゲンを実現し、それをセールスポイントにしているというわけです。
グルテンフリーを勧めるサイトの中には、穀物が入ってなければ糖質制限ダイエットになって痩せるからいい、というようなことを書いているところがあります。
人の方でも糖質制限ダイエット自体が長期的に健康にどう影響するかはっきりわかっていない段階です。
ワンちゃんに糖質制限ダイエットはしないでください。必ず炭水化物を必要量含んでいるフードを選んでください。
「ドッグフードに穀物は必要か?」という問の答えは、穀物に多く含まれる炭水化物は必須だけど穀物である必要はない、ということになります。
穀物をドッグフードに使用して問題になるのはアレルギーが関与する場合に限られます。
また、吸収しやすいように加工されたドッグフードで、穀物の消化不良が問題になることはありません。
グレインフリーやグルテンフリーは必須ではありませんが、アレルギーの出やすい犬種・血統であるとか、少しでもアレルギーを起こさないようにしてあげたいと考えているのならオススメなのは間違いありません。
