ワンちゃんを飼育する時の食事には、ほとんどの飼い主さんがドッグフードを利用します。
食事をホームメイドで与えることもできますが、手作りドッグフードのメリット・デメリットで書いたように、長期の栄養バランスを考えると過不足なく必要な栄養を摂取させるのはかなりの手間。
その点、ドッグフードは総合栄養食として、それさえ与えておけば何も足す必要のないように完全な栄養バランスで作られているのです。
ドッグフードを選択する際には添加物の有無も気になりますが、基本の栄養についてもチェックをしましょう。
この記事では、ワンちゃんが健康を維持していくのに必要な栄養量について解説します。
Dr.ノブ
タロ
現在、国内外で製造されているドッグフードのほとんどが米国飼料検査官協会(AAFCO)のガイドラインに沿って作られています。
日本でもペットフード公正取引協議会の規約はAAFCOのガイドラインを基準としています。
長らくAAFCOのガイドラインは1997年版のものを採用していて、現在販売されているドッグフードの多くはこのバージョンを元に作られたものです。
新しく2016年版として大幅に改定されましたので、いずれこれを基準に作られていくようになるでしょう。
本来、肉食動物だった犬は、長い間、人と暮らすようになって雑食性へと変わってきています。
とは言っても、完全に雑食になったわけではなく過渡期的な状態で、必要な栄養バランスから見ると肉食の猫と雑食の人間の中間くらいにいると考えるといいでしょう。
AAFCOの2016年版ガイドラインではどうなっているかをみていきましょう。
成長期と成犬期では必要な栄養量が全く違ってくることに注意してください!
AAFCOの推奨するドッグフードに含まれるカロリー数は4,000kcal/kg。
改定により1997年版の3,500kcal/kgよりもアップされています。
この数値は水分を0にした時の乾燥重量あたりのカロリー数なので、ウエットフードやドライフードによって、重さあたりのカロリー数は異なってきます。
たとえばドライフードだと水分量が10%くらいなので、ドライフード1kgあたりにすると3,600kcal程度の計算です。
「ライト」や「ローカロリー」などの表記がある場合は3,100kcal/kg未満(乾燥重量)で作られています。
ただし、これらは目安であって製品の実際の数値は多少前後するでしょう。
ワンちゃんに与える量はライフステージと体重から1日の必要カロリー数を計算して求めていきます。
さらに実際の給与量はその子の気質・環境により加減してあげることが必要です。
具体的な必要カロリー数は表を利用したり、計算式で算出することができます。
体重(kg) | 離乳期 | 成長期 | 成犬期 |
---|---|---|---|
1 | 274 | ||
2 | 461 | ||
3 | 625 | ||
4 | 775 | ||
5 | 916 | 669 | 441 |
10 | 1,541 | 1,125 | 742 |
15 | 2,088 | 1,524 | 1,006 |
20 | 2,591 | 1,891 | 1,248 |
25 | 2,236 | 1,476 | |
30 | 2,564 | 1,692 | |
35 | 1,899 | ||
40 | 2,100 |
個別に体重から算出するには次の計算式を用います。
[ライフステージ別の係数]×[体重]0.75=[1日の必要カロリー]
ライフステージ別の係数は
- 離乳期:274
- 成長期:200
- 成犬期:132
こうして出したワンちゃんの必要カロリー数と与えているドッグフードの重さあたりのカロリーから、給与量を計算することができます。
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タンパク質の量は重量比で
- 成長期:22.5%(最小値)
- 成犬期:18.0%(最小値)
となっていて成長期(妊娠・授乳期も同値)は1997年版の22.0%よりも若干アップされました。
しかし、ドッグフードのカロリー数自体がアップされているので、カロリーあたりのタンパク質の量に換算すると1997年版よりも成長期で89.5%、成犬期で87.5%に減らされています。
一方、成長期に対する個別のアミノ酸の数値は、数十%も大幅に強化されています。
ステージ | 成長期 | 成犬期 | |
---|---|---|---|
栄養素 | 最小値 | 最小値 | 最大値 |
アルギニン | 1.0% | 0.51% | |
ヒスチジン | 0.44% | 0.19% | |
イソロイシン | 0.71% | 0.38% | |
ロイシン | 1.29% | 0.68% | |
リジン | 0.90% | 0.63% | |
メチオニン | 0.35% | 0.33% | |
メチオニン +シスチン | 0.70% | 0.65% | |
フェニルアラニン | 0.83% | 0.45% | |
フェニルアラニン +チロシン | 1.30% | 0.74% | |
トレオニン | 1.04% | 0.48% | |
トリプトファン | 0.20% | 0.16% | |
バリン | 0.68% | 0.49% |
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実際に市販されている製品は、これらの数値よりも多く含むように設計されています。
脂質は1997年版では成長期8.0%、成犬期5.0%だったものが2016年版では
- 成長期:8.5%
- 成犬期:5.5%
とアップされていますが、カロリーあたりに換算すると1997年版の96.5%程度とほぼ変わらない数値になっています。
リノール酸については
- 成長期:1.3%
- 成犬期:1.1%
となり成長期のみカロリーあたり10%程度アップ。
さらに1997年版では含まれていなかったαリノレン酸とEPA+DHAが、成長期のみ
- αリノレン酸:0.08%以上
- EPA+DHA:0.05%以上
を含有することを推奨しています。
※EPAはエイコサペンタエン酸、DHAはドコサヘキサエン酸の略です。
また、
- [リノール酸+アラキドン酸]:[αリノレン酸+EPA+DHA]の比が30:1以下
という最大値が設定されています。
両者のバランスが大事で、オメガ6脂肪酸が多すぎるとアレルギーが起こりやすかったり、炎症やうつ、痴呆などにも関連してくると考えられています。
ミネラルのガイドラインは2016年版になって大きく変更されてるので、各数値を表にして紹介します。
ステージ | 成長期 | 成犬期 | |
---|---|---|---|
栄養素 | 最小値 | 最小値 | 最大値 |
カルシウム | 1.2% | 0.5% | 2.5(1.8)% |
リン | 1.0% | 0.4% | 1.6% |
Ca:P比 | 1:1 | 1:1 | 2:1 |
カリウム | 0.6% | 0.6% | |
ナトリウム | 0.3% | 0.08% | |
塩素 | 0.45% | 0.12% | |
マグネシウム | 0.06% | 0.06% | |
鉄 | 88mg/kg | 40mg/kg | |
銅 | 12.4mg/kg | 7.3mg/kg | |
マンガン | 7.2mg/kg | 5.0mg/kg | |
亜鉛 | 100mg/kg | 80mg/kg | |
ヨウ素 | 1.0mg/kg | 1.0mg/kg | 11mg/kg |
セレン | 0.35mg/kg | 0.35mg/kg | 2mg/kg |
※以前は、マグネシウム、鉄、銅には最大値が設定されていましたが、2016年版ではなくなっています。
子犬をペットショップで飼うとカルシウム剤を買わされてフードにふりかけるように指示されることがよくあります。
カルシウムは与えすぎると軟骨や骨に障害がでます。
過剰摂取はよくないので表にあるように最大値が設定されているのです。
子犬用のドッグフードを与えていれば十分ですので注意しましょう。

ビタミン類も大幅に改定されているので、一覧表にしてご紹介します。
ステージ | 成長期 | 成犬期 | |
---|---|---|---|
栄養素 | 最小値 | 最小値 | 最大値 |
ビタミンA | 5,000IU/kg | 5,000IU/kg | 250,000IU/kg |
ビタミンD | 500IU/kg | 500IU/kg | 3,000IU/kg |
ビタミンE | 50IU/kg | 50IU/kg | |
チアミン | 2.25mg/kg | 2.25mg/kg | |
リボフラビン | 5.2mg/kg | 5.2mg/kg | |
パントテン酸 | 12mg/kg | 12mg/kg | |
ナイアシン | 13.6mg/kg | 13.6mg/kg | |
ピリドキシン | 1.5mg/kg | 1.5mg/kg | |
葉酸 | 0.216mg/kg | 0.216mg/kg | |
ビタミンB15 | 0.028mg/kg | 0.028mg/kg | |
コリン | 1360mg/kg | 1360mg/kg |
※2016年版ではカロリーあたりの数値でみると、ビタミンA、D、Eを除いて、ほとんどが増量強化されています。

今、愛犬に与えている、あるいはこれから与えようと考えているドッグフードがAAFCOのガイドラインに沿っていると明記されていないのなら、これらの基準と比べてみて実際に栄養素が足りているかどうかを確認してみましょう。
ドッグフードはずっとワンちゃんが主食として食べていくものなので、栄養素の基準に達しているかどうかはとても大切です。
ライフステージごとの必要カロリー数と含まれる栄養素の量が十分であればOKです。
現在、販売されているドッグフードは1997年版に基づく製品ばかりなので、今回の数値から外れているものがあるかもしれませんが、何年かのうちに改定されていくでしょう。
普段与えているドッグフードのカロリーや栄養素の量を意識する必要はありませんが、新しくドッグフードを与え始める前には確認しておきましょう。
最初に確認しておけば、以後は安心して与えることができます。
愛犬の健康を考えてドッグフードにこだわるのなら、添加物だけでなく基本の栄養についてもチェックしておきましょう。