塩が入ったドッグフードは本当に良くないの?

ネットでドッグフードのことをいろいろ調べていると、原材料に塩を使用したドッグフードは良くないという内容の記述をしたサイトをしばしば目にします。

各ブランドのドッグフードを調べていると確かに塩を添加している製品と添加していない製品があります。

実際のところはどうなんでしょう?本当に塩を添加しているフードは粗悪なんでしょうか?

この記事では、それらのサイトの主張を専門家の立場から検証して、実際に塩が添加されたドッグフードと添加されていないフードの違いを比較してみます。

これまで塩が入っているフードは良くないと信じて、購入するのを避けていた方はぜひご一読ください。

Dr.ノブ

塩の添加が悪いというのは、ビートパルプと同じで言いがかりに近いものがあります。
味が変わったりするのかな?

タロ

塩を添加しているフードは良くないと言っているサイトの言い分

まずはっきりさせて置きたいのですが、ここで言う塩分とは塩化ナトリウム(NaCl)のことです。

塩分の体への影響はナトリウムによるものなので、塩分はナトリウムのことと考えてけっこうです。

食品中の塩分による影響を考える時はナトリウム濃度として考えます。

では、塩を添加したフードは良くないと主張しているサイトの言い分を見てみましょう。

Dr.ノブ

ここに挙げたのはそれらのサイトの言い分なので真に受けないようにしてください。
あとで、ひとつひとつ検証していきます

なぜ塩を入れる必要がないか

  • 犬は足の裏以外汗をかかないから沢山の塩分はいらない
  • わざわざ塩分を添加すると過剰摂取になる
  • 原材料には塩分が含まれているので良質な素材なら塩分を添加する必要がない

なぜわざわざ塩が添加されているか

  • 塩が多いと食いつきがいいから
  • 粗悪な原材料だから。保存料として

各サイトの言い分を抽出するとだいたいこのようになります。

汗をかかなくても犬も一定量の塩分が必要

ドッグフードに塩を添加する必要のない理由として、よく、犬は足の裏しか汗をかかないから塩分をそれほど必要しないということが言われます。

つまり人は汗をいっぱいかいてナトリウムを失うけども、犬はほとんど汗をかかないからナトリウムを補給する必要性が低いということらしいです。

しかし、そもそもナトリウムは汗よりもほとんどが尿から排泄されます。

尿からの排泄量を調節することで体内のナトリウム濃度は一定に保たれているのです。

なので汗うんぬんという主張は的外れと言わざるを得ません。

よく、人に比べると犬の必要とする塩分(ナトリウム)量は少ないと言われますが、実際はどの程度か計算してみましょう。

人に比べて犬の食事のナトリウム量は少ない?

AAFCO(米国飼料検査官協会)のガイドラインではフード中に必要なナトリウムの濃度は、

  • 成長期の子犬: 0.3%
  • 成犬    : 0.08%

となっています。

MEMO
AAFCOのガイドラインは全世界のペットフードの基準となる数値で、ほとんどのペットフードメーカーはこのガイドラインをクリアするようにフード設計しています。

この数値はあくまで最小値でこれ以下だと問題があるという値です。

実際にはこれよりも高い濃度になるようにフード設計されます。

ナトリウム濃度は表示義務はないので明らかにしていないメーカーも多いですが、ナトリウム濃度を公表しているフードの値をいろいろ見てみると、だいたい0.3~0.7%になっています。

5kgのワンちゃんだと、フードにもよりますが1日の食事量が100g位というのが平均的。

仮にナトリウムが0.5%だとすると

100g×0.5%=0.5g(=500mg)

となって、1日に500mgのナトリウムを摂取することになります。

ナトリウム量を塩分量(食塩相当量)に換算するには

ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)

という計算式で算出できるので、先程の500mgで計算すると

500mg×2.54÷1000=1.27(g)

となります。

食塩1.27gってけっこう多いですよ。

だって日本人の18歳以上の男女でもナトリウムの1日推定平均必要量は600mg、食塩相当量に換算すると1.5gと見積もられています。

この塩分量は現実的ではないので、1日の摂取目標量として18歳以上の女性で7.0g、男性で8.0gとされています。

たった5kgのワンちゃんが摂取している量が1.27gということは、体重あたりで言えばワンちゃんのほうが全然多いじゃないですか。

「0.5%という仮定が高すぎるんじゃないか」

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、0.5%というのは決して高くはありません。

心臓病のための療法食では心臓への負担を軽減するためにナトリウムを制限してあるのですが、

例えば心不全初期に使うロイヤルカナンの心臓サポート+関節サポートでは0.34%、進行した心不全で使う心臓サポート2でも0.13%のナトリウムが入っています。

0.5%というのは決して高くなく、平均的なフードなのです。

Dr.ノブ

心臓サポート+関節サポートの0.34%でさえ60kgの人間に換算すると1日の摂取量が10.4gにもなります。
犬の摂取量は決して少なくはないのです。

塩を添加しているフードでも塩分濃度は高くない

じゃあ、そもそも塩を添加しているフードはなんの目的で塩分を増やしているのでしょう。

それは一般的な原材料ではナトリウムが足りないからなのです。

ナトリウムは穀物や野菜などにはほとんど含まれていません。

含まれているのはほ肉や海産物に限られます。

例として鶏肉、牛肉、魚のナトリウムを見てみましょう。

部位や種類によってナトリウム量が異なるので、それぞれ胸肉、もも肉、イワシで調べると次のようになります。

  鶏胸肉 牛もも肉 いわし
ナトリウム量
(100gあたり)
42mg
(0.042%)
50mg
(0.05%)
81mg
(0.081%)

この表の数値を見ると原材料に含まれるナトリウムの量はかなり少ないのがわかると思います。

MEMO
ナトリウムは血液に多く含まれ、筋肉など細胞部分にはあまり含まれないのです。

ドッグフードでは乾燥させた素材を利用することも多いので、乾物であれば濃縮されてもっと多くはなります。

このように食材に含まれるナトリウムが多くないので、十分なナトリウム量が確保できないために塩を添加する必要があるのです。

MEMO
塩・海塩・食塩・NaClとして添加されるだけでなく、ミネラルとしてナトリウムそのものが添加されているフードもあります。

Dr.ノブ

塩分を添加していないフードの場合、

  • 肉をたっぷり使っている
  • チキンミールなどの乾燥タンパク源を多く使っている
  • 魚を使っている
  • 海藻類を使っている

などでナトリウム量をカバーできているのでしょう。

塩を加えているフードと加えていないフードのナトリウム濃度を見れば明らか

本当にナトリウム量をまかなうために塩分を加えているのか、実際に塩が添加されているフードと塩を添加していないフードのナトリウム量を比べてみましょう。

製品中に含まれるナトリウム濃度を公表しているフードは少ないのですが、公表しているプレミアムドッグフードの中から、塩を添加しているフードとして

  • ハッピードッグ
  • オーブンベイクド
  • ソリッドゴールド

を、そして塩を添加していないフードとしてカナガンをピックアップして比べてみました。

商品名 ハッピードッグ
ミニ アダルト
オーブンベイクド
アダルト チキン
ソリッドゴールド
ウィービット
カナガン
添加塩分 塩化ナトリウム 海塩 なし
ナトリウム濃度 0.4% 0.5% 0.34% 0.6%

一目瞭然ですが、塩分を添加しているフードは全然ナトリウムは多くないですよ。

むしろ塩分を加えていないカナガンの方が高いんです。

食いつきを良くするために塩分を多くしているなんてまったくのデタラメだということがはっきりしました。

しかし、

「塩を加えていてナトリウム濃度を公表していない商品は塩分が多いんじゃないか?」

とおっしゃる方もいるかも知れません。

いえいえ、そもそも犬が塩分が多いと食いつきが良くなるという前提が間違っているのです。

そもそも犬は塩味に対する味覚が欠如している

人は塩分の高い食事を好む傾向があるので、

「犬は塩分が多いほうが食いつきが良い」

と言われると、そうなのかなぁと思ってしまいますよね。

しかし、これには大きなウソがあります。

犬は塩味をほとんど感じないんです。

塩味を感じないのは肉食である食肉目に共通することで、獲物を血液や内臓ごと、小いさな獲物は骨まで食べる肉食動物ではそれでバランスよくナトリウムを摂取できるので、塩味を感じる必要がないからと考えられています。

こんなコトちょっと調べればウィキペディアにも書いてあるんですけどね。

同じ食肉目のイエネコと違い砂糖などの「甘味」を感じることが出来る。サツマイモなどの甘味のあるものを好むとされる。酸味にも敏感でこちらは一般的に好まない。一方で塩味には鈍感でほとんど感じ取れていないとされる。
引用:Wikipedia

Dr.ノブ

犬は塩味を好むからフードに塩分を加えられているなんて言っているサイトは信用しないほうが良いですね。

保存料として働く濃度ではない

前述のサイトの中には、

「ドッグフードに塩が添加されているのは、粗悪なフードの保存性を上げるため」

と書かれていました。

しかし、ドッグフード含まれる塩分程度では保存性を高める効果はまったく期待できません。

塩には殺菌性があるわけではなく、浸透圧によって細菌が水分を奪われるために増殖できなくなるのです。

そのためにはもっと高濃度の塩分が必要です。

梅干で20%、塩辛で数%の塩分濃度がありますからね。

1%ちょっと(塩分相当量)のドッグフードでは屁の突っ張りにもならないのです。

まとめ

以上のように、塩を添加しているフードが粗悪なんてことはまったくなく、言いがかりに過ぎないことがはっきりしました。

これまで塩が使われているフードを避けていた方、避ける必要はまったくありませんので安心して選んでください。

それ以外の添加物の有無や主原料、素材のこだわりの部分で判断するようにしましょう。

Dr.ノブ

塩を添加しているフードに粗悪だとダメ出しをしていたサイトこそ粗悪ですね。
それらのうち2つのサイトでは管理人がドッグヘルスアドバイザーの資格を取っていることをアピールしていて、なんだかなぁと思います。
ハリボテの資格なんじゃない。

タロ