今やペット産業は花ざかりで、把握しきれないくらい数多くのドッグフードが流通していますね。
定番のドライフードをはじめ、缶・パウチのウエットフード、中には人でもおいしく食べられそうなゴージャスなレトルトタイプもあります。
可愛いゆえに、あれもこれも与えたくなりますが、そこはぐっと我慢してください。
フードをコロコロ変えていると、ドッグフードを食べてくれなくなるという問題が起こる可能性があります。
この記事では、フードをたびたび変えることで起こる問題点について考えたいと思います。
Dr.ノブ
タロ
目次
毎日代わり映えのしないドッグフードを与えていると、飼い主さんは自分に置き換えて食べ飽きてかわいそうだなと感じてしまいます。
そう思えばこそ愛犬のためにいろんな違った味のドッグフードを与えたくなってしまうんですよね。
でも実際にワンちゃんがフードに飽きて、食事を味気なく感じているのでしょうか?
ワンちゃんがどう感じているかは本人にしかわかりませんが、次のことから決してかわいそうなことではないのは確かでしょう。
ウエットフードならまだしも、ドライフードは人の感覚からしたら味気なく見えますよね。
愛犬の食べている様子を見てると、「味気なさそうだな…」と感じてしまいます。
でも本当にワンちゃんは味気なく思っているのでしょうか?
野生で生きていかないといけない動物では、毎日食事にありつけるようなことはありません。
たまたま連日獲物をゲットできても、翌日から何日も食べられないことは普通にあります。
食べられる時に食べておかないと、いつまた食べられるかわからない厳しい世界ですから、いざ食事にありついた時はガツガツ食べるのです。
動物は食べ物にありつけるだけでも幸せなものです。
人に飼われるようになって何万年も経つワンちゃんも、野生の頃はそうだったはず。
ところが人に飼われていると、毎日上げ膳据え膳でドッグフードがもらえるわけですから食べ物への本能的な執着は薄れてきています。
一見、嬉しそうに食べていなくても、それは人間の感覚を当てはめているだけのことではないでしょうか?
味気なさそうなんてことは考えなくていいと僕は思います。
毎日同じフードだと、人からすると飽きてしまわないかと心配になります。
でもそれも人の感覚を当てはめているだけじゃないでしょうか?
上に書いたように、動物は食べられるだけで幸せなもの。
野生でも獲物の味にそれほど変化があるとは思えません。
日々、同じような生肉を食べていわけですから。
1種類の味のドッグフードを食べ続けても、それが苦になることはまずないでしょう。
猫で顕著なのですが、犬でも子供の頃から食べている馴染みのフードを好んで食べる傾向にあります。
一般に犬はウエットフードを好みますが、ドライフードしか食べたことのない子ではウエットフードを嫌がる子も珍しくありません。
馴染みのものを好むということは、いつも同じドッグフードでも嫌ではないのだと考えられます。
ワンちゃんにはドッグフードをガツガツいっぱい食べる子と、時間をかけて少しずつしか食べない子といます。
これは生まれつきの個体差ですが、同じフードでもガツガツ食べる子はおいしそうに見えますし、ちょびちょび食べる子はおいしくなさそうに見えます。
でも、それは持って生まれた食の細さによるもの。
ちょびちょび食べている=ドッグフードが味気ない、とは限りません。
食の細い子ではどのドッグフードに変えたところで、最初はいつもより食いつきがよくなったとしても、すぐにいつもの状態に戻ってしまうでしょう。
そんな子にいろんなドッグフードを手を変え品を変え与えていると、次に述べるようにドッグフードを一切食べない子に育ってしまうかもしれません。
1種類のドッグフードを与え続けることがかわいそうかどうかに関係なく、ドッグフードの銘柄を変えても別にいいじゃないかと思うかもしれません。
飼い主さんの満足が得られるのなら、いろいろなフードを与えるのもありなのかもしれませんが、それをすると後々、修正が困難な悪いクセを身につけてしまうかもしれません。
犬の味覚には人間のような甘味を感じる能力もあります。
けっして人より味覚が劣っているわけではないのです。
一定のドッグフードで飽きもせず満足している子でも、フードの銘柄をコロコロ変えていろんな味を覚えていくと、嗜好性、つまり好き嫌いが出てきてフードのより好みをするようになります。
人間同様にワンちゃんも口が肥えていくのです。
そんな子に同じドッグフードを与え続けると、実際に味に飽きてしまって食べなくなったりイヤイヤ食べる様子があらわれてきます。
もともと食が細い食いつきの悪い子が味を覚えてしまうと最悪です。
食への執着がないだけに、ちょっとした味の違いで食べたり食べなかったりがはっきりします。
食べていたものに飽きるのも早く、加速度的に口が肥えていきます。
2~3日同じフードが続くと食べないために、ほぼ毎日のように銘柄を変える必要のある子も少なくありません。
ドッグフードの範囲内で味を覚えてしまうのはまだましで、味の濃い人の食べ物の味を覚えてしまうとさらにやっかいになります。
飼い主さんは人の食べ物を与えていないつもりでも、家族の誰かがこっそりと与えていることはよくあること。
人の食べ物はドッグフードに比べて塩分や脂肪分が多く味が濃くなっています。
人の食べ物の味を知ってしまうと、嗜好性の強い子ではドッグフードを一切食べなくなってしまうことも。
そういう子は人の食べ物でも特定の物しか食べないので、栄養のバランスがかたよってしまうという問題もでてきます。
一度、そうなってしまうと修正するのは非常に難しくなります。
ドッグフードを食べるまで他のものを一切あげないと頑張っても、頑としてドッグフードを食べようとはしません。
そういう子は健康上の問題が出るほどに何日でも食べるのを我慢するので、結局、飼い主さんが根負けすることになります。
口を肥えさせない方法の基本は、あれこれフードを変えて味を覚えさせないことです。
他の味を知らなければ同じフードでもそれなりにおいしく食べてくれます。
ベストなドッグフードが決まったら、できるだけ一定のフードを与えるようにしましょう。
一度封を開けて1ヶ月ほど食べさせて使い切ってから、別のフードを与えるのならまだしも、もっと短いスパンでフードを変更することは避けましょう。
それでも別のフードやおやつを欲しがって、本来のフードを食べなくなってくることがあるかもしれません。
その場合は本来のドッグフード以外は一切与えないように頑張ってみましょう。
食事を与えて食べなければ10分ほどで引き上げて、次の食事まで何も与えないようにします。
健康な成犬なら1食抜いても問題ありません。
嗜好性が強くなってしまってからでは難しいですが、初期なら根比べでうまくいくことが多いです。
ここで根負けしてしまって、別のおいしそうなフードを与えてしまうと、ワンちゃんからしたら食べないことで別のおいしいフードが出てくるという成功体験になってしまいます。
気に入らなければ食べないという行動がどんどん強化されていきます。
気をつけないといけないのはドッグフードだけではありません。
もし、おやつも与えているのなら、おやつが原因で口が肥えてしまうかもしれません。
おやつもあれこれ変えるのではなく、一定のおやつに決めて与えるようにしましょう。
一般にワンちゃんはおやつの方を好みます。
ワンちゃん自身には食事とおやつという概念がありませんから、よりたくさんのおやつを欲しがってドッグフードを食べなくなる原因になります。
おやつはただ与えるのではなく、何かのご褒美として与えるようにしましょう。
また、肥満防止の意味でも1日のカロリー量の20%以内におさえましょう。

ワンちゃんを嗜好性の強い子にしないためには、飼い主さん自身があまり過敏にならないことです。
健康な成犬なら丸一日くらい食べなくても全然平気です。
ちょっと食いつきが悪いとか少し残すからといって、すぐにフードを変えていたら、「食べなければ新しいフードに変わる」とワンちゃんは学習してしまいます。
それを繰り返していると学習は強化されて、ちょっと飽きるとすぐ食べなくなり、毎日のように違うフードを要求する好き嫌いの強い子ができあがります。
”元気がない”とか”お腹がゆるい”とか体の調子が悪いサインがあるのならともかく、元気で便も尿もいつも通りでフードだけ気に入らない素振りなら、フードを変える必要はありません。
ずっと飼っているとその子が好き嫌いであまり食べないのか?体調が悪くて食べてくれないのか?はある程度判断できるはずです。
食べるまで同じフードでというのは健康な時に限ります。
調子悪そうなら必ず病院へ行きましょう。

上の話はその子に合ったドッグフードが決まってからのこと。
ベストなドッグフードが決まるまでの間、あれこれフードを試している時に、新しい銘柄に変えても食べてくれないことがあります。
その場合は対応が異なります。以下の記事を参考にしてください。

ワンちゃんの食事は、器に入れっぱなしでダラダラ食べさせてはいけません。
ずっと胃腸を働かすのはよくありません。食べずに胃腸を休ませる時間が必要です。
また、ダラダラ食べることで与えているドッグフードへの興味が低下し、逆に目新しい食べ物への興味が強くなります。
食事の時間は一定にして、その時に食べないのと次の食事まで食べ物にありつけないことを覚えさせましょう。
そして現在与えているドッグフードに悪い印象を与えないようにすることも大切です。
いつも新鮮な状態で与えられるようにフードの管理に気をつけて劣化させないこと、そして食べ残したフードは早めに片付けて風味の落ちたフードを食べさせないようにしましょう。

ワンちゃんに好き嫌いが出てしまうのは、人に飼われていることが最大の原因です。
飼い方を間違えると、一切ドッグフードを食べないくらい好き嫌いが激しくなることもあります。
どんなに無添加の良いドッグフードも食べてくれなければ意味がありません。
食事の与え方にも気をつける必要があります。
ワンちゃんの好き嫌いに振り回されない自信があるのなら、少々ドッグフードを変えてみるのはありですが、そうでなければむやみに銘柄を変えないのが無難。
もしフードローテーションするのでしたらメリットとデメリットをよく理解して実行しましょう。
