ワンちゃんを飼ったことがある人なら経験があると思いますが、犬でもある程度歳をとってくると口のニオイが気になりだします。
犬は虫歯にはほとんどなりませんが歯石がつきやすく口臭や歯周炎の原因となるのです。
また、シニアになる頃には歯周病が進んで歯を失ってしまう子がたくさんいます。
これらの歯のトラブルを防ぐには人間同様に歯のケアがとても大切です。
また、食べているフードのタイプによってトラブルの起こりやすさが異なることにも注意。
この記事では、ドライフードの歯に対する効用と歯のケアについてご紹介します。
Dr.ノブ
タロ
目次
犬に歯周病がどれくらい発生しているか知っていますか?
ペット保険のアニコムの統計では2%前後とされています。
しかし、これは症状があって病院を受診した割合に過ぎません。
歯周病になりやすい犬種には
- イタリアングレーハウンド
- ミニチュアダックス
- トイプードル
- チワワ
- ヨークシャーテリア
- ポメラニアン
- シーズー
などがあげられます。
見てわかるように小型犬種に起こりやすいです。
引用SURGEON No.35 より引用・改変
歯のケアをしないと、まず最初に歯の表面に歯垢がたまってきます。
歯についた歯垢はたった数日のうちにミネラルが沈着し、歯石へと変わってしまいます。
ワンちゃんの歯にうっすら茶色い色が付いていたら歯石が付き始めているサイン。
これを放置しておくと、そのうち歯の表面をすっぽり覆うように塊状に歯石が付いてしまうのです。
歯垢や歯石には歯周病菌がたくさん繁殖していて、歯と歯ぐきの間に侵入し炎症を引き起こします。
やがて歯ぐきは退行していき、歯を支える骨までやられて歯がグラグラに。
そして最終的に歯が抜け落ちてしまうのです。
Dr.ノブ
頬の皮膚が破れて膿や血が出てきてびっくりすることになります。
人では歯周病になると腎臓病や肺炎、心内膜炎になるリスクが高くなることがわかっていて、全身の病気に関わる疾患としてとらえられています。
犬ではまだそこまではっきりと言えるデータはありませんが、関連が疑われる研究結果が少しづつ出てきています。
犬でも歯周病を口臭や歯のトラブルとだけ考えるのではなく、健康に大きく影響するトラブルとして受け止めるべきでしょう。
一般にドライフードは噛む時に歯の表面を磨く効果があり、半生フードやウエットフードに比べると歯石がつきにくいとされています。
もちろん、ドライフードさえ食べておけば大丈夫ということではありませんよ。
ドライフードを食べていてもある程度の年齢になってくると茶色く歯石が付きはじめ、高齢になるとやはり歯が抜けてしまう子が大半です。
歯のためにはドライフードはベストですが、歯のケアとしては全然足りないということ。
ドライフードを食べさせていても必ず歯のケアも平行して行わなければなりません。
歯の異常はたいてい前歯から始まります。
それほど歯石が付いていなくても、歯ぐきが下がってしまいグラグラしだします。
前歯、特に下の歯がきれいに並ばず乱れていたらすでにグラグラしているはずです。近いうちに抜けてしまうでしょう。
歯がグラグラしたり抜けたりしても、痛がる様子がなければやわらかいフードに変える必要はありません。
残った歯のためにドライフードをそのまま与え続けましょう。
歯石がついて歯周病菌が繁殖し、歯周病になっていくというのがお決まりのパターンです。
でも、見た目に歯石がついていなくても歯周病になってしまっていることもあります。
歯と歯ぐきの間にはポケットと呼ばれる浅い溝があります。
このポケットの部分に歯垢や歯石がたまってしまっていると、露出している部分がきれいでも歯周病が進んでしまっていることがあるのです。
潜在的に進んでいる歯周病を見つけるには口臭の変化が役に立ちます。
以前に比べて口臭が臭くなってきたら歯周病が始まっているサインの可能性があります。
一度、かかりつけの先生に診てもらいましょう。
歯ぐきが腫れていれば診断は簡単ですが、歯ぐきの見た目に変化がないこともあります。
その場合は歯科用レントゲンで撮影して判断する必要があるので、歯科専門の病院へ行かないと診断できない場合もあります。
歯周病を予防するための歯のケアは、歯をブラッシングすることが基本です。
本来、ワンちゃんは口の中を触られるのを好みません。
性格にもよりますが、成犬になってから歯みがきの習慣をつけようと思っても受け入れてくれないことが多々あります。
なので、できるだけ子犬のうちから歯みがきをすることに慣らしていきましょう。
歯みがきに慣らしていく手順
- 最初は口元を触るだけにします。
慣れたら触る時間を伸ばしていきます。 - 唇をめくって歯に触ってみましょう。
最初は閉じたままで、慣れたら口を開けさせたり奥歯にも触れてみましょう。 - 従順なワンちゃんならいきなり歯ブラシを使ってもいいですが、まずは指にガーゼを巻いて歯をこすってみましょう。
水で濡らしてまずは前歯から。慣れたら奥歯もしましょう。
嫌がったら無理に続けないようにしましょう。
ポイントは嫌がる前にやめることです。日にちをかけてゆっくりと慣らしていきましょう。
歯みがきに嫌なイメージを持たせないようにすることが大事です。
終わったらほめてあげたり一緒に遊んだりして、歯みがきが楽しいことにつながるものなんだというイメージをつけるようにしましょう。
タロ
歯みがきの手順
- 歯ブラシは犬用のものがいいですが、人の幼児用のやわらかい歯ブラシでも大丈夫です。
- 水で濡らして、まずは前歯から始めましょう。
いきなりゴシゴシせずにゆっくりと動かします。 - 慣れてきたら奥歯も磨いていきますがまだ外側だけでけっこうです。
- 十分慣れたと感じたら、口を開けさせて歯の裏側も磨いてみましょう。
焦らずゆっくりと慣らすのを心がけてください。
ガーゼや歯みがきシートで磨くだけでも見た目のきれいさは維持できます。
でも、先ほど述べたようなポケットにたまる歯垢には効果がありません。
そこで、歯ブラシを使って歯磨きすると、上の写真のように毛先がポケットに入り込んできれいにすることができます。
なので、できるだけ歯ブラシで歯みがきができるように頑張ってみましょう。
今は、歯ブラシだけでなく、犬用の歯みがきペーストも販売されています。
一般に、ワンちゃんが好んで歯みがきをするように、ペーストにチキン風味など味が付けられています。
歯ブラシになかなか慣れてくれない場合は歯みがきペーストを使ってみると、ごほうびになってブラッシングをさせてくれるようになるかもしれません。
歯垢(プラーク)は細菌の塊で、ドッグフードに含まれる糖類をエサにして繁殖します。
歯みがきで歯垢を落としても口の中から菌がいなくなることはないので、
24時間もすればまた歯垢がたまってきてしまいます。
そして、この歯垢を放っておくと
唾液中のカルシウムなどのミネラルが沈着して歯石へと変わってしまいます。
歯垢は歯みがきで落とすことはできますが、いったん歯石になってしまうと歯みがきでは落とせません。
犬の場合は麻酔をかけてスケーラーという機械で削り落とさなくてはいけなくなります。
歯垢が歯石へと変わるタイムリミットはたったの2日間しかありません。
なので、なるべく毎日、最低でも2日に1回は歯みがきをするようにしましょう。
子犬から歯みがき習慣をつければ、たいていのワンちゃんが受け入れてくれます。
でも、成犬になってから歯みがきを始める場合、ワンちゃんの性格によっては口を触らせてくれるようになっても、歯みがきまでさせてくれないこともあります。
そんなケースでは妥協案になりますが、簡易にできる液体 or ジェル歯みがき(液体を歯ぐきに垂らすだけ)やサプリメントで歯周病菌を抑制し口臭をおさえるという方法もあります。
歯みがきに比べると効果は落ちますが、やってみる価値はあります。
サプリは食べてくれるかどうか(当院は舐めるタイプ)という問題はありますが、使っている猫ちゃんで「口臭があまりしなくなり歯が白くなった」と飼い主さんが非常に満足したケースがあります。
効果には個体差があると思いますが、興味のある方はかかりつけの先生に相談してみてください。
歯磨きができないときの代わりの口腔ケアグッズの記事も参考にしてください。

ドライフードは見た目には味気ない感じなので、愛犬にはおいしそうなウエットタイプを与えたくなります。
でも、愛犬の歯の健康、さらには体の健康を考えた場合にはドライフードがおすすめです。
固いフードを噛むことで、歯の表面を摩擦し歯垢を大まかに削ぎ落としてくれます。
ただそれだけでは不十分なので、歯みがきの習慣をつけていつまでも健康な歯でいられるようにケアしてあげましょう。
ウエットタイプしか食べない子の場合は、徹底した歯のケアをしてあげないと若くして歯を失うことになりますので注意しましょう。