人で膀胱結石や尿管結石があるように、ワンちゃんでも尿路に結石のできることは珍しいことではありません。
犬種や年齢に関係なく起こる可能性があり、結石が小さかったり少量だと症状のないことも多いので、異変に気づいたときにはかなり大きく育ってしまっていたということが多々あり、
”膀胱炎になって病院へ行ったら結石が見つかってびっくり”
なんてことになります
結石症は場合によっては腎不全から命を落とす危険もある病気なので、日頃からその兆候には目を光らせておきたいものです。
この記事では、尿石症を起こしやすいワンちゃんの性質や要因についてまとめてみました。
健康管理の参考にしてください。
目次
一口に結石と言っても、構成している成分によって以下のような種類があります。
- ストルバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム結石)
- シュウ酸カルシウム結石
- 尿酸塩結石
- シスチン結石
- シリカ結石
だいたいこの5つの種類の結石が見られますが、ワンちゃんではストルバイト結石とシュウ酸カルシウム結石がほとんどを占め、他の結石はあまり多くありません。
それぞれに性質が異なりますから、結石ができやすい条件には多少の違いがあります。
ではどんなワンちゃんが結石症になりやすいのか見ていきましょう。
結石は自然とできてしまうこともありますが、尿中に含まれる細菌を核として結石に成長していくことがあります。
つまり尿路に感染があると細菌誘発性の結石ができるリスクが高くなることに。
結石があることで膀胱炎を起こしやすくなるので、膀胱炎が先か?結石が先か?というニワトリと卵のような関係ですが、膀胱炎を繰り返しているのなら結石ができてしまっているか将来的に結石ができる可能性があります。
Dr.ノブ
尿検査でストルバイト結晶が見つかったのなら結石予備軍として注意が必要です。
長時間我慢させることなく排尿させていれば、たとえ結晶や微小な結石ができたとしてもすぐにオシッコとして排出され、肉眼的な結石にまで成長することはありません。
反対にトイレを我慢させて、膀胱に尿が溜まっている時間が長ければ長いほど結石はできやすくなります。
水を飲む量が少ないワンちゃんでは尿量も少なくなり、上に書いたような尿で洗い流す効果が薄れます。
また、脱水を防ぐために尿が濃縮されやすく、尿の中に結晶が析出しやすくなります。
そのため結石のできるリスクが高くなるのです。
Dr.ノブ
グルココルチコイド(ステロイド剤)やビタミンD、カルシウム剤などのある種の薬を長期的に飲んでいる場合には、尿へのカルシウムやリンの排泄を増加させるため、結石を作ってしまう可能性があります。
Dr.ノブ
動物性タンパク質にはオシッコに含まれるシュウ酸、カルシウム、尿酸塩を増加させ、尿を酸性化させる作用があり、尿酸塩結石やシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。
プレミアムドッグフードには原材料に肉をたくさん使った製品が多くありますが、極端にタンパク質の多い食事を長期に続けている場合には注意が必要です。
人では美容に良いとシリカ(ケイ素)を含んだシリカウォーターが人気ですね。
シリカ結石は比較的まれな結石ですが、シリカを過剰に摂取するとシリカ結石のできるリスクがあります。
シリカは動物性材料にはほとんど含まれず、ある種の植物にたくさん含まれています。
シリカ含有量の多い食品としては
- 大麦
- キビ
- トウモロコシ
- ジャガイモ
などがあります。
これらはドッグフードの原材料としてよく使用されているものなので、これらが主原料となっているフードでは気をつけたほうがいいかもしれません。
ワンちゃんの中には、庭の土を掘り返すいたずらをする子がいますが、掘っている時にある程度土を食べてしまっている場合があります。
あるいは園芸用の土を直接食べてしまうような子もいます。
土にはケイ素が含まれているため、このようなワンちゃんではシリカ結石のリスクは高くなるかもしれません。
次のような症状に気づいたら病院へ行って検査をしてもらいましょう。
朝晩の散歩の時間まで我慢できずにトイレへ行きたがったり、散歩に行ってトイレをしても1回で済まずに何度もオシッコをするかっこうをしていたら膀胱炎のサイン。
メス犬では単純な膀胱炎はよくあることですが、ひょっとしたら結石ができていて膀胱炎の原因になっているのかもしれません。
Dr.ノブ
尿の色は通常、ほぼ透明~薄い透明な黄色をしているものです。
それが腎臓や膀胱に結石があって、それによって出血したり続発した膀胱炎で出血していると尿の色の変化が見られるはずです。
明らかな血の色が混じっていたら気づきやすいのですが、結石で尿全体がそこまで赤く染まることはあまりありません。
だけど、少し茶色が混じったような色をしていたら、少量の血液が混じっている可能性ありです。
また、膀胱炎では尿の最後の方に赤い色が出てくることがよくあります。
最後に絞り出した1滴が赤くて気づけるかもしれません。
何度もオシッコの姿勢をとっても、それなりに出ていればまだいいのですが、どんなに頑張っても出ていない、あるいはポタポタとしか尿が出ていないような場合には尿道が結石で詰まってしまった可能性が高いです。
このような状態を尿道閉塞と言います。
尿道閉塞はほとんどが尿道が細く長いオス犬に起こるもので、できるだけ早く詰まりを解除しないと腎不全であっという間に死んでしまう怖い状態。
愛犬の尿の出がおかしいと感じたら、何をさておいても即刻病院へ行ってあげてください。
Dr.ノブ
結石が作られないようにするために、次のようなことに注意しましょう。
上に書いたように、水分摂取量が少ないと結石ができやすくなりますので、飲みたい時にすぐ飲めるように新鮮な水を常に置いておくのが鉄則です。
いつのまにか水入れがカラになっていたなんてことのないように注意しましょう。
ワンちゃん自身があまり水を飲まない場合には、ウエットフードを主食にしたり併用するようにして水分摂取量を増やすのも方法です。
あるいは鶏肉などを煮たスープをドライフードにかけたりしてもいいかもしれませんね。
ワンちゃんの飲水量についてはこちらの記事を参考にしてください。

膀胱に尿が溜まったままにしておくと結石ができやすくなるので、最低1日に2回は散歩に行ってトイレを我慢させないようにすることはとても大切です。
理想をいうならば、お家でトイレをしたくなったらすぐオシッコができるようにトイレトレーニングをしておくことがベストです。
散歩にでかけた途端、待ってたように飛び出して行ってすぐにオシッコをしているようならちょっと考えたほうがよさそうですね。

最後は結石を作らないためというより、万一、結石ができてしまっている時にできるだけ早く見つけるために、オシッコの色や量、回数、そして尿がスムースに出ているかどうかなど、排尿の様子をよく観察することです。
結石がある程度大きくならないと症状がはっきりしないことが多いですが、よく観察していれば尿の色や出方の異変に気づくことができるかもしれません。
時には流れ出たオシッコに結晶がキラキラ光っていて気づくこともあります。
オス犬では尿道閉塞を見逃さないようにしましょう。
尿石症は犬でもとてもポピュラーな病気です。
結石のできやすい項目に当てはまるのなら、改善できることは改善するように心がけましょう。
よくある病気と言っても、命を落としかねない怖い部分もあるので、日頃の予防の意識と早期発見するための観察がとても大事。
泌尿器系の病気はけっして侮ることなく、異変を感じたらすぐ病院へ行くくらいの気持ちでちょうどいいかもしれません。