ワンちゃんの食事は完全栄養食であるドッグフードだけを与えるのが理想です。
でも、同じ屋根の下に暮らしていると、ついつい人の食べているものを与えてしまうことが多いようですね。
でも人とワンちゃんでは体の代謝が違うので、人で普通に食品として食べているものがワンちゃんにとっては危険な食べ物となることがあります。
この記事では、ワンちゃんに与えてはいけない代表的な食品をご紹介します。
知らずに中毒事故を起こさないように、しっかり覚えておいてくださいね。
Dr.ノブ
タロ
人では大丈夫なのにワンちゃんにとって危険な食べ物の代表といえば、玉ねぎやネギです。
ワンちゃんがネギ類を食べると血液中の赤血球が壊されてしまい、貧血になってしまいます。
大量の壊れた赤血球の赤い成分(血色素)が尿に出てきて、赤茶色のおしっこになるのが特徴です。
赤血球の壊れる量が多いと貧血の他に腎不全が出てくることもある恐い中毒です。
さすがにネギ中毒は有名になったので、ほとんどの飼い主さんはネギや玉ねぎがワンちゃんに危険なことはご存知なようです。
でも、意外と見落としてしまうのが、エキスとして入っていてもダメなこと。
玉ねぎやネギはスープや加工食品の材料としてよく使用されているので、本体が入っていなくてもエキスとして入っていないかに注意してください。
また、ネギの仲間のニンニクも同じ中毒成分が入っているので与えてはいけません。
覚えておきましょう。

女性にとって甘くて魅惑的なスイーツのチョコレートは、ワンちゃんにとっては悪魔的な猛毒の食べ物になります。
チョコレートに含まれるテオブロミンには強心作用があり、ワンちゃんはこの成分をうまく代謝できないために心臓に過剰な作用をもたらします。
チョコレートを食べると4~5時間で嘔吐・下痢をしたり落ち着きがなくなる症状が出てきますが、重症化すると震えたり意識が朦朧(もうろう)として最終的に死んでしまうことも多い恐ろしい中毒です。
チョコレート中毒のことを知らない飼い主さんがまだ多いのが恐いところで、ワンちゃんの中毒死の原因として多いものの1つです。
コーラや人の飲み薬(眠気覚まし、気管支拡張剤など)でも同様の中毒が起こるので注意しましょう。

虫歯予防のガムとして定着したキシリトールガム。
このキシリトールがワンちゃんにとってはとても毒性の強い成分になります。
キシリトールを摂取することでインスリンが大量に分泌されて、急激な低血糖を起こします。
これは犬特有の反応で人や猫では起こりません。
血糖値は高血糖になる糖尿病がよく知られていますが、実は低血糖の方が恐いのです。
極度の低血糖になると痙攣を起こして死んでしまいます。
高血糖で急死することはありませんが、低血糖になるとあっという間に死んでしまいます。
キシリトール中毒では低血糖が改善した後に、肝不全が起こってくることもあります。
キシリトールはワンちゃんに絶対に与えてはいけない食品の1つなのです。
虫歯予防のガム以外にも、シュガーレスのお菓子や歯みがきなどにもキシリトールは使用されていることがあるので、十分に注意しましょう。

世間的にはまだほとんど知られていないのが、ブドウによる中毒です。
獣医師の間でも知られるようになったのがこの10年くらいです。
ワンちゃんがブドウを食べると急性腎不全を起こします。
食べてから4~5時間で嘔吐が始まり、その後腎不全でオシッコが作られなくなります。
致死率は50%近くにもなり、ワンちゃんにとってブドウは猛毒と言っていいレベルに危険な食べ物なのです。
これほど恐い中毒なのに、なぜワンちゃんにブドウで腎不全が起こるのかはわかっていません。

「犬に鶏の骨を与えるな」とは昔から言われてきたことです。
鶏の骨は割れると断面が鋭利になるため、ワンちゃんが食べて飲み込んだ時に食道に刺さってしまう危険があります。
生の骨はやわらかいのですが、熱を加えるとタンパク質が凝固して硬くなってしまうのです。
万一、食道に刺さってしまうと食べ物を飲み込むことができなくなり、飲んでもすぐに吐いてしまいます。
そうなると内視鏡、時には手術で鶏の骨を取り除かなければなりません。
必ず刺さるというものではありませんし、胃まで落ちてしまえば消化をされてしまいます。
しかし、刺さるリスクは否定できないので、鶏の骨は与えない方が無難でしょう。

ほうれん草は中毒を起こす食品というわけではありません。
しかし、ほうれん草にはシュウ酸という成分がたくさん含まれています。
ワンちゃんには泌尿器系に結石のできる尿石症がとても多く、シュウ酸は代表的な尿結石であるシュウ酸カルシウム結石の材料となります。
結石のできやすい体質のワンちゃんにほうれん草を与えることは厳禁です。
また、シュウ酸カルシウム結石自体できやすいものなので、今まで尿石症になったことがなくてもほうれん草を与えるのは避けたほうがいいでしょう。

豆類もワンちゃんに毒性があるわけではありません。
しかし、豆の食物繊維は腸内細菌に分解される時にガスを発生しやすく、食べ過ぎると腸にガスがたまった鼓脹症という状態になりやすいのです。
鼓脹症で命を落とすことはありませんが、食事を食べられなくなったり腹痛があったりとワンちゃんを苦しませることになります。
煮豆や豆腐など加工したものは大丈夫です。
節分の時の豆やおつまみのピーナッツを盗み食いされないように注意しましょう。

ワンちゃんに与えないほうがいい食品はこれだけではありませんが、代表的なものを挙げました。
人が普通に食べているものをワンちゃんに与えるというのは、とてもリスクのあることがわかると思います。
普段、良質なドッグフードを食べさせていても、不用意に与えたり盗み食いされた食べ物で健康を害することがあります。
良質なドッグフードと決められたおやつ以外は食べさせないように、しっかりと管理しなければいけませんね。