食物アレルギーは簡単に言うと、子犬の頃に食べた食品に対して免疫が過剰に反応するようになり、大きくなってからその食品を食べることで皮膚のかゆみや消化器症状が出る病気です。
つまり以前に食べたことがあるものがアレルゲンになるというのが基本です。
ところがアレルギー検査でアレルゲンを調べてみると、これまで愛犬に食べさせたことがない食品に対して反応が出ることがあります。
このような反応を交差反応といいます。
犬の食物アレルギーの治療は、これまで食べたことのない食材で構成されたドッグフードを与える食事療法がメインですが、このような食事で症状の改善が見られない場合は交差反応が起こっているのかもしれません。
目次
ある犬が以前に食べたAという食べ物に対してアレルギーを獲得してしまったとします。
この場合、Aはアレルゲンとなる食べ物ということになります。
ここで、Bというこれまで食べたことのない食べ物を食べさせたところ、同じようにアレルギー反応が出てしまったとします。
本来は、以前に食べたことがある(感作された)ものに対してアレルギーは起こるものです。
Bに対して感作されていない(つまりアレルギーを獲得していない)はずなのに、Bをアレルゲンとして認識してしまうことを交差反応性あるいは交差抗原性といいます。
ほとんどの場合、AとBは種類の近い食べ物であるという特徴があります。
交差反応は見た目にも似た食べ物どうしで起こるのが普通です。
交差反応は必ず起こるというものでもなく、食品によって交差する確率も変わります。
以下に主な交差反応する食べ物を表にしてみました。
アレルゲンの食品 | 交差反応の 危険率 |
交差反応する食品 |
---|---|---|
小麦 | 20% | 大麦、ライ麦など他の穀類 |
牛乳 | 10% | 牛肉 |
4% | 馬乳 | |
92% | ヤギ乳 | |
サーモン | 50% | 他の魚類 |
エビ | 75% | カニ、ロブスター |
ピーナッツ | 5% | えんどう豆、レンズ豆 |
メロン | 92% | スイカ、バナナ、アボカド |
桃 | 55% | りんご、プラム、梨 |
けっこういろいろありますね。
注意しないといけないのは逆方向にも交差反応は起こるということ。
ただし、危険率は変わってきます。
免疫とは、外から入って来る細菌やウイルスが体の中で繁殖しないようにやっつけてくれる、とても重要な役目を果たしています。
しかし、その機構は非常に複雑で微妙なバランスの上に成り立っているので、ちょっとしたことで過剰な反応をしたり暴走したりすることがあるのです。
食物アレルギーは免疫の過剰な反応の一つといえます。
ところでアレルゲンになる食べ物とそうじゃない食べ物は何で区別されるのでしょう?
免疫は食べ物に含まれるタンパク質の特定の部分をアレルゲンとして認識します。
ところが異なる食べ物間でタンパク質が一部似ている場合があります。
そのためアレルゲンじゃない食べ物に対してもアレルゲンと誤って免疫が認識してしまうことがあるのです。
このため交差反応が起こってしまいます。
このようないわば誤作動のようなことが起こるのも、免疫が複雑で微妙なバランスの上に成り立っているゆえですね。
上の表にはいれませんでしたが、まったく想像もしないもので交差反応が起こることがあります。
特に重要なのは、アトピーの原因となる花粉が交差反応で食物アレルギーを起こすこと。
以下に食べ物以外で交差反応を起こす主な物質を表にしました。
アレルゲンの物質 | 交差反応の 危険率 |
交差反応する食品 |
---|---|---|
カバノキ科 (白樺、ハンノキ、オオバヤシャブシ) |
55% | りんご、桃、西洋梨、サクランボ あんず、アーモンド |
不明 | セロリ、にんじん、じゃがいも、大豆、ピーナッツ、キウイ、マンゴー | |
ブタクサ | 55% | メロン、スイカ、ズッキーニ、きゅうり |
スギ | 不明 | トマト |
イネ | 不明 | メロン、スイカ、トマト、じゃがいも、キウイ、オレンジ、ピーナッツ |
ゴム製品 | 35% | キウイ、バナナ、アボカド |
このょうにある種の花粉に対しアトピーを持っている子は、いろんな食品に対して食物アレルギーが起こる可能性が高いのです。
アトピーは食物アレルギーを併発している可能性も考える必要がありますね。
ゴム製品は花粉ではないですが、接触性アレルギーを起こす子は交差反応に注意です。
アレルギー検査を受けてアレルゲンとなる物質が判明したら、その物質を避けることだけを考えがちですが、この記事で紹介したように、食品によっては交差反応がけっこうな確率で起こっています。
アレルゲンを避けた低アレルゲンのドッグフードを食べていても、あまり改善が見られない場合やほとんど変わらない場合は交差反応の可能性を考えたほうがよさそうです。
また、食品だけでなくアトピーの原因アレルゲンでも交差反応が起こりうるので、それまで季節的な発症だったのが冬にも症状が出てきているのなら、花粉との交差反応が起こっているのかもしれません。
その場合はドッグフードの原材料を今一度チェックしたほうがいいでしょう。