手作り食やペットショップなどで極小規模に作られている自家製フードだけを食べさせていると栄養不足が起こることを知っていますか?
それらは愛犬のための特別な食事という感じですから、それで栄養不足を起こすなんて思いもしないですよね。
愛犬の食事を考える時、タンパク質・脂質・炭水化物(糖質)の三大栄養素とカロリーのことばかりに目がいって、ミネラルやビタミンの量はおろそかになりがちです。
しかし、極微量なミネラルやビタミンのバランスが悪いことで病気につながってしまうことがあるのです。
この記事では、手作り食やペットショップ自家製フードなどで過不足が起こりやすいミネラル・ビタミンをまとめました。
また、どのような食事内容がトラブルを起こしやすいのかについても書いています。
手作り食を考えている方はこちらの記事もに参考にしてください。

手作り食や自家製フードで過不足が起こりやすいのはどんな栄養素なのかと、どのようなトラブルが起こってくるのかをまとめました。
ワンちゃんの体にもっとも多く含まれるミネラルで、骨や歯を作っている主役です。
不足すると骨がもろくなり骨折しやすくなります。
また、成長期には過剰に摂取すると骨や軟骨の成長に異常をきたします。
鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの重要な成分。
不足すると貧血になり、疲れやすくなったり食欲が落ちてしまいます。
ひどくなるとフラフラしたり、口の粘膜の色が白くなってしまうことも。
過剰に摂取すると臓器に鉄が沈着して肝臓などの機能が低下することがあります。
犬の体内には微量にしか存在しませんがある種の酵素の材料となり、赤血球や組織の形成や抗酸化作用に関係するミネラルです。
不足すると貧血や皮膚の角化異常を引き起こします。
過剰による問題はほとんどありませんが、ベドリントンテリアは肝臓に銅が蓄積しやすく慢性肝炎を起こすことがあります。
DNAやタンパク質の合成に深く関わっているミネラルです。
不足すると貧血や皮膚の角化異常、精子数の減少などが起こります。
ハスキーやアラスカン・マラミュート、ドーベルマン、ゴールデンレトリバーなどは亜鉛吸収不全が起こりやすく、結果的に亜鉛不足による角化異常になることがあります。(亜鉛反応性皮膚症)
亜鉛を過剰に摂取すると中毒を起こしますが、食事によって起こる心配はありません。
甲状腺ホルモンの材料となるため、不足により甲状腺機能低下症の原因になることがあります。
粘膜を正常に保つ働きがあり免疫力を高め感染を防ぐ働きや、目の働きに関係します。
過剰になると食欲不振や知覚過敏になりますが、犬では非常に稀です。
ビタミンB1(チアミン)は糖質代謝に欠かせない他、神経を正常に働かせる作用があります。
不足すると神経の異常をきたします。脚気(かっけ)はチアミン欠乏症のことです。
ビタミンB2(リボフラビン)は皮膚や粘膜の健康を維持するのに重要なビタミンです。
不足すると皮膚や粘膜にトラブルが起こりやすくなります。
ナイアシンは糖質・脂質・タンパク質それぞれの代謝に不可欠なビタミンで、不足すると皮膚や粘膜のトラブルの原因になります。
ビタミンB群は水溶性なので、過剰に摂取しても余分な分は尿として排泄されるため過剰症の心配はありません。
ビタミンDはカルシウムやリンの吸収に働き、強い骨や歯を形成するのに役立つビタミンです。
欠乏すると骨が変形する骨軟化症やくる病になってしまいます。
ビタミンEは全身の組織に分布するビタミンで抗酸化作用で細胞の老化を防ぎます。
不足すると細胞や血管が老化して病気になりやすくなります。
上記のミネラルやビタミンの過不足はどのような食事内容で起こるのかをくわしく見てみましょう。
ワンちゃんの祖先は肉食のオオカミということで、肉中心の食事を与えたほうが良いという考え方があります。
そのため、ドッグフードを一切使わずにホームメイドで肉だけを与えているケースがみられます。
しかし、肉類(魚肉も含む)には、
- カルシウム
- ナトリウム
- 鉄
- 銅
- ヨウ素
- ビタミンA
- ビタミンB1
- ビタミンB2
- ナイアシン
- ビタミンD
- ビタミンE
などが十分含まれていません。
長期に渡って肉オンリーの食事を続けるとこれらの栄養素の欠乏症を起こしてしまいます。
Dr.ノブ
ホームメイドの食事では、ローテーションを行っていても栄養バランスが十分でないとされています。
ローテーションにどんなレシピを入れているかで、どの栄養素のバランスが悪いかは変わってくるでしょう。

また、ペットショップなどのごく小規模生産のフードではAAFCOのガイドラインを満たしていないものが多くあります。
すべてが悪いわけではないでしょうが、店によっては栄養バランスの悪いものもあるようです。
特に亜鉛・銅の不足からくる皮膚の角化異常(亜鉛反応性皮膚症)がいくつか報告されていて別名ジェネリック・ドッグフード皮膚症と呼ばれます。

魚介類(マス、タラ、ニシン、ヒラメ、イカ、エビなど)の肉には、ビタミンB1(チアミン)を分解するチアミナーゼという酵素が含まれています。
そのため魚介類をたくさん食べさせるとビタミンB1を失ってチアミン欠乏症が起こります。
ビタミンB1の必要量は猫のほうが多いのでチアミン欠乏症は猫でよく見られますが、犬でも大量に魚介類を食べさせると起こる可能性があるので注意が必要です。
Dr.ノブ
上に書いたように、肉のみの食事ではカルシウムが不足する可能性がありますが、それ以外にサプリとしてカルシウム剤を与えていると問題が起こることがあります。
注意しないといけないのは子犬と妊娠犬。
子犬では食事に子犬用フードを用いますが、このフードはすでにカルシウムが強化されています。
それに加えてカルシウム剤を与えるとカルシウムが過剰になり骨や関節に影響が出る可能性があります。
また、妊娠犬にカルシウム剤を与えていると、授乳時に骨からのカルシウム動員がうまく行かなくなり、低カルシウム血症によるけいれん発作が起こることがあります。(産褥テタニー)
ビタミンやミネラルのような微量栄養素は軽く考えがちですが、バランスが悪いといろんなトラブルを起こします。
手作り食やペットショップの自家製フードにもメリットはありますが、それだけですべての栄養をまかなうのは困難です。
良質なドッグフードを併用して栄養不足を起こさないように注意しましょう。