ドッグフードの原材料表をよく見てみると、「ミックストコフェロール」という素材がよく使用されています。
この素材は主に価格の高いプレミアムドッグフード(いわゆる無添加ドッグフードのたぐい)によく入っていて、大手の安価なドッグフードではあまり使用されていません。
あまり馴染みのない素材だと思いますが、その正体は誰もが知っている意外に馴染みのあるものです。
一体、何の目的でドッグフードに使用されているんでしょう?
この記事では、ミックストコフェロールに期待される効果とドッグフードに使用される理由について調べてみました。
トコフェロールとはビタミンEのこと。
ビタミンEにはいくつかの種類がありα(アルファ)-トコフェロール、β(ベータ)-トコフェロール、γ(ガンマ)-トコフェロール、δ(デルタ)-トコフェロールと(α、β、γ、δ)-トコトリエノールがあります。
そして、ミックストコフェロールとは天然の植物油脂から抽出された
- d-α-トコフェロール
- d-β-トコフェロール
- d-γ-トコフェロール
- d-δ-トコフェロール
を主成分とするもののことをいいます。
原材料表の表示では、ミックストコフェロールのほか、抽出トコフェロールや抽出ビタミンEと書かれていたり、時には単にトコフェロールやビタミンEと簡略化されて表示されているケースもあるようです。
ビタミンEなので、栄養添加のために使用されていると思われがちですが(もちろん栄養としても働きます)、ミックストコフェロールは本来別の目的で使用されるものです。
ミックストコフェロールは空気中の酸素と反応しやすく、自身が酸化されることで不飽和脂肪酸などの脂質が酸化されるのを防ぐ性質があります。
つまり、BHTやBHAなどの人工添加物に代わって酸化防止剤として用いられているのです。
酸化防止剤と言っても、ひまわり油などの天然植物油から作られているので非常に安心なもの。
酸化されたミックストコフェロールはビタミンCなどによってビタミンEに再生され、栄養としても働きます。
Dr.ノブ
ミックストコフェロールを加えることでこれらの機能を維持してくれます。
食品に添加されるビタミンEには、酸化防止剤としてのミックストコフェロール以外に、栄養添加物としてのビタミンEがあります。
栄養添加物として使用されるビタミンEはd-α-トコフェロール酢酸エステルおよびトコフェロール酢酸エステルというもので、これらのビタミンEには食品中での酸化作用はありませんので、酸化防止剤の効果はありません。
Dr.ノブ
ビタミンEは脂溶性ビタミンなので、過剰に摂取することで問題が出る可能性があり、人の方では過剰摂取で骨粗しょう症のリスクが高くなることが言われています。
しかし、犬ではビタミンEの過剰に耐性が強いとされていて、とくに過剰症が出るということは明確になっていません。
以前のAAFCOのガイドラインではビタミンEに上限が定めらていましたが、AFFCO2016からは上限が取り外されました。
このことは少々過剰になっても犬の場合にはほとんど問題ないということです。
サプリなどでビタミンEを与えている場合は過剰に注意する必要はありますが、ミックストコフェロールが添加されたフードを与えている程度では何の心配もありません。