近年の健康ブームで、食品添加物を意識する人が増えてきました。
食事は毎日のことなので、できるだけ添加物の少ないものをできれば無添加物を食べたい、というのは自然の流れでしょう。
そういう人がワンちゃんを飼うことになれば、当然ドッグフードにも無添加を望むようになります。
この記事では、せっかくの良質な無添加ドッグフードが無駄にならないように、どのような状況でそうなってしまうか?、そしてどのようにすれば避けることができるかを紹介します。
Dr.ノブ
タロ
目次
そもそもどういう物質のことを添加物と呼ぶか知っていますか?
食品衛生法第4条で次にように定義されています。
食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するもの
つまり食材としての原料ではなく、ある目的によって意図的に添加されるもの全般を指します。
栄養価を上げるためのアミノ酸や酵素なども添加物の一種です(既存添加物)。
一般に”添加物”という時は、香料や着色料、保存料などの指定添加物のことを指すことが多いです。
指定添加物には化学的に合成された人工のもの以外に、天然成分のものもありますが、健康問題で槍玉に上がるのは主に人工の添加物の方です。
ドライフードでは封を開けてからしばらく与え続けるのが普通のため、品質を保持するために添加物がよく使われます。
一方、ウエットタイプのドッグフードでは滅菌包装されて使い切りなので、品質維持のための添加物はほとんど入っていません。代わりに風味をよくする目的の添加物が使われていることが多いです。
ドライフードに入っている主な添加物の使用目的について見てみましょう。
保存料は直接、菌の繁殖を抑える作用(静菌作用)があり、添加することでより長く品質を維持することができます。
ドライフードは殺菌処理により封を開けるまでは菌が繁殖する心配はありません。
しかし、どんなに清潔にしていても手にも空気中にも雑菌は普通にいるので、一旦、封を開けてしまえばその瞬間から菌の汚染が起こります。
水分の少ないドライフードでは菌の繁殖するスピードは遅いとはいえ、保管状況によっては使用中に問題のあるほど菌の繁殖が進んでしまう事があります。
これを防ぐ目的で保存料が使用されるのです。
酸化防止剤はドッグフードの脂質などの代わりに自らが酸化されることで、製品の酸化が進むのを防いでくれます。
ドッグフードの品質が劣化するのは、菌の繁殖による腐敗だけでなく、空気中の酸素によってドッグフードの酸化が進むことでも起こります。
やはり封を開けるまでは空気に触れないので大丈夫なのですが、封を開けると酸化がスタートします。
pH調整剤は製品を酸性(pH4~5)に保つことで、間接的に菌が繁殖するのを防止します。
添加物の代表である保存料が消費者から敬遠される傾向にあるため、代わりとしてpH調整剤がよく使われています。
増粘剤は製品に粘りを与えて食感をよくする目的でウエットタイプに使われます。
甘味料は味をよくする目的で添加されるものです。
同じように風味をよくする目的で香料が使われることもあります。
添加物のリスクについてはこちらの記事をご覧ください。


無添加の方が安心と言っても、添加物は目的があって使用されるもの。
添加物を避けたことでデメリットが出てくるケースもないわけではありません。
コンビニのおにぎりで起こっていることですが、消費者が保存料を嫌うため代わりにpH調整剤が使用されています。
pH調整剤も添加物なのですが、保存料よりは消費者受けがいいのでしょう。
ところがこのことは、かえって健康には良くないことになっているのです。
保存料には安全性を確保するために1日摂取許容量(ADI)が定められていて、使用できる量が規制されています。
一方のpH調整剤には使用基準が定められていないため、上限なしに使用することができるのです。
そのためコンビニのおにぎりに使用されているpH調整剤の量はかなり多く使われています。(保存料と同程度の効果を出すためには10倍程度の量が必要といわれる)
で、添加物の種類にもよりますが、毒性(急性毒性をあらわすLD50)はpH調整剤の方が高いのです。
保存料を避けるために毒性の高いpH調整剤をより多量に使用するという、本末転倒なことが起こっているのです。
ドッグフードでも保存料は使用していないけれど、pH調整剤を使っている場合には注意してください。
無添加で保存料の入っていないドッグフードは、本来、健康リスクがないと安心できるものです。
しかし菌の繁殖を抑える保存料が入っていないのですから、ドッグフードが傷むのが早いというデメリットもあります。
きちんと管理しておかないと雑菌が繁殖したフードを愛犬に与えてしまうことになります。
愛犬の健康を考えてわざわざ値段の高い無添加フードを与えているのに、それで健康を害してしまっては元も子もありません。

封を開けると空気中の酸素によってフードは徐々に酸化され劣化してしまいます。
酸化防止剤は身代わりに酸化されることでフードが酸化するの防いでくれるのですが、無添加のドッグフードではそれがありません。
そのため酸化防止剤を添加したドッグフードよりも早く酸化が進んでしまいます。
ドッグフードに含まれる脂質が酸化されると品質の劣化だけでなく、生じた過酸化物によって消化器障害や細胞へのダメージが起こります。
結局、酸化防止剤の問題よりもフードの酸化による問題の方が大きくなってしまう可能性があります。
風味を良くするタイプの添加物は、感覚の鋭いワンちゃんの食いつきを良くするのに有効です。
なので、この手の添加物を使ったドッグフードに比べ、無添加のドッグフードでは食いつきが劣ることがままあります。
好き嫌いが激しいワンちゃんでは無添加フードを食べてくれないという問題が出るかもしれません。
また、最初は食べてくれていても、開封後の劣化につれて食べなくなるということもあります。
どんなに良いドッグフードも食べてくれなければ何にもなりません。
添加物のリスクよりも、”食べてくれない”、”栄養を摂ってくれない”ことによる健康リスクが上回ってしまうこともあります。

劣化しやすい無添加ドッグフードは、品質を維持するために以下のことに気をつけましょう。
無添加ドッグフードでも開封前は1年や1年半ほどの賞味期限の猶予がありますが、一度封をあけてしまうと品質が落ちる前にできるだけ早く使い切らないといけません。
無添加でも品質維持に効果のあるビタミンEやハーブを添加していてある程度は保存は可能なので、ワンちゃんのサイズを考えてだいたい1ヶ月で使い切れる量のパッケージを選ぶようにしましょう。
小さいワンちゃんなのに徳用サイズを買ったりしないようにしてください。
保存料などの添加物が入っていない無添加フードは、高温多湿など悪い環境で保存するともろに影響を受けてしまいます。
開封したらなるべく密閉できる容器に入れて、日光の当たらない涼しい場所に保管しましょう。
小さなワンちゃんで消費するのに時間がかかりそうなら、ジップロックなどに小分けして保存するのもいいでしょう。
冷蔵庫に入れると出した時に結露して湿気やすいのでお薦めはできませんが、ジップロックなどに小分けして密閉したものなら冷蔵庫に保存するのもありです。

無添加ドッグフードは添加物で風味を良くすることができないので、素材の良さが食いつきに影響します。
無添加でも食べてくれなければ意味がありませんので、新鮮で品質のいい原料を使用したドッグフードを選ぶのがポイントです。

ドッグフードに添加物が入っていないに越したことはありません。
でも添加物が使用されるのは必要があってのこと。
健康のために無添加ドッグフードを選んでも、添加物が入っていないことによるデメリットが上回ってしまうこともあるということを知っておきましょう。
無添加ドッグフードを選んだ時は、そのデメリットが出ないように管理に気をつける必要があります。