飼い主さんの中には避妊する前に一度、お産をさせたいという方が結構いらっしゃいます。
新しい命が誕生するのは感動的で、愛犬が産むとなると何ものにも代えがたいものがありますね。
さて、愛犬が妊娠した時や授乳中には必要な栄養量が大きく変わります。
それまでと同じ食事では胎児や新生仔の発育に大きく影響することも。
妊娠・泌乳中は必要な栄養量を満たすように、与えるドッグフードや給与量を変えてあげることが不可欠です。
この記事では、妊娠・授乳時の必要な栄養とドッグフードの給与の仕方について解説しています。
愛犬が妊娠した時の参考にしてください。
Dr.ノブ
タロ
目次
犬の妊娠期間は62日前後。
妊娠してもすぐに高栄養が必要になるわけではありません。
妊娠前半の胎児の成長は遅く、妊娠1ヶ月では分娩時の体重の2%にも満たないのです。
そして妊娠1ヶ月を超えると急激に成長していきます。
なので妊娠5週に入る頃から母犬のエネルギー必要量が増えていきます。
6~8週の頃が最大となり、胎児の数が少なくても一般の成犬の3割増しのエネルギーが必要になります。
胎児数が多いとさらに増えて5~6割増しものエネルギーが必要です。
タンパク質も妊娠の前半は一般の成犬と同じレベルで問題ありません。
しかし妊娠の後半に入ったら、4~7割増のタンパク質が必要とされます。
エネルギーよりも多く増やす必要があるので、かなりの高タンパクの食事が必要になります。
Dr.ノブ
脂肪も重要なエネルギー源なので、妊娠の後半になったら増やしてあげる必要があるでしょう。
妊娠7週に入った頃から脂肪を増量した食事に変更したほうが良いとされています。
胎児の発育に必要なエネルギーの大半がブドウ糖で供給されるため、妊娠の後半は炭水化物の量も増やしてあげないといけません。
妊娠中はエネルギーの20%を炭水化物で与えるのが良いとされています。
Dr.ノブ
妊娠の後半1ヶ月に急速に胎児が成長するため、カルシウムとリンの必要量が増えます。
ある程度強化してあげる必要がありますが、妊娠中にカルシウムを与えすぎると産後にケイレン(産褥テタニー、子癇)を起こすリスクが高くなるので要注意。
鉄も胎児の成長にともなって必要量が増えます。
不足すると母犬が貧血になってしまいますよ。
妊娠中は亜鉛も不足しやすいので注意が必要です。
Dr.ノブ
通常、犬の赤ちゃんは複数で生まれ、しかも急激に成長します。
産後は母乳で子犬を育てるので、妊娠中よりも多くの栄養を必要とします。
必要とするエネルギー量は子犬の成長とともに増えていき、産後1ヶ月前後になると一般の成犬の倍以上のエネルギーが必要に。
必要エネルギー量は子犬の数が多いほど増えるため、最大4倍ものエネルギーを補給してあげないといけません。
子犬が離乳食を食べるようになってくると必要なエネルギー量は減っていき、生後8週になる頃には通常の成犬のエネルギー量で足りるようになります。
授乳中の母犬が必要とするタンパク質は、エネルギー以上に強化してあげる必要があります。
母犬が食べられる量には限りがあるので、高タンパク質の栄養価の高いフードを与えないといけません。
最低でも25%のタンパク質を含んだフードが求められます。
授乳中も引き続き脂肪は多く必要とされます。
与える食事は10~25%の脂肪を含んだフードが望まれます。
出産後もお乳に含まれる乳糖のレベルを維持するのに炭水化物が必要になります。
少なくとも炭水化物を10~20%含んだ食事が必要です。
妊娠中は過剰なカルシウムは禁物ですが、出産後はたくさんのカルシウムとリンの補給が必要です。
必要とされる量は授乳している子犬の数に左右され、最大では一般の成犬の2~3倍のカルシウムが要求されます。
発情期や交配の時期は繁殖に備えて栄養が必要に思えますが、この時期は成犬用の維持食のままでかまいません。
妊娠中から栄養を増やしていくので、野生動物のように繁殖に備えて皮下脂肪を蓄えておく必要はないのです。
高栄養にしても受胎率がよくなるわけではありませんし、太ってしまうと難産になりやすくなってしまいます。
むしろデメリットのほうが大きいのです。
産子数を増やすことのできるフラッシングテクニックについてはこちらの記事を参考にしてください。

妊娠してもすぐに栄養を増やす必要はありません。
妊娠1ヶ月まではそのまま成犬用維持食を与えましょう。
妊娠1ヶ月を超えたら胎児が急激に成長するので高栄養のフードに切り替えます。
子犬用フードは先に述べたような妊娠期に必要な栄養を十分まかなえます。
ほとんどの場合、パッケージに妊娠・授乳期の母犬の総合栄養食としておすすめできることが記載されているので、子犬用フードを与えておけば間違いありません。
ただし、妊娠末期になると胎児が成長し、母犬の胃が圧迫されます。
この時期には非常に多くの栄養が必要なのに、胃が圧迫されてたくさんは食べられません。
特に胎児数が多い場合は栄養が足りなくなる可能性があるので、食事の回数を増やして対応する必要があります。
また、子犬用フードを使っていればカルシウムを補給する必要はありません。
前述のように妊娠中にカルシウムを過剰に与えると出産後にケイレンを起こすことがあるので注意しましょう。
授乳中も子犬用フードを与えれば間違いありません。
必要な量は妊娠中よりも多くなるので、給与量を増やす必要があることに注意!
さらに子犬の成長にともなって必要な栄養量は日々増えていくので、母犬のBCS3を維持するように調節します。
※BCSは肥満度をチェックする数値で、くわしくは以下の記事を参照してください。

生後1ヶ月頃に必要な栄養量は最大になります。
その後、子犬が離乳食を食べ始めると今度はフードの給与量を減らしていかなければいけません。
生後2ヶ月頃には離乳を終えて、通常の維持食に戻します。
Dr.ノブ
特に産子数が多い大型犬では母犬が栄養不足にならないように気をつけてあげてください。
妊娠・授乳期はライフステージの中でも特別な期間です。
時期によって必要な栄養が大きく変化もします。
母犬が栄養不足にならないように、さらに新しい生命がすこやかに成長できるように、きめ細やかな栄養管理を心がけてください。