診察の時にワンちゃんの食事回数を尋ねてみると、飼い主さんによって答えはさまざまです。
個体によって条件が異なるので、これという決まりはないのですが、基本的な目安はあります。
健康を維持するためにも、その子に合った適正な食事回数と食事量を見つけて与えることは大切です。
いったい1日に何回の食事を与えればいいのか考えてみましょう。
Dr.ノブ
タロ
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犬の祖先が野生で生きていた頃は、いつも狩りが成功するわけではないので、1日に決まった回数の獲物にありつけるなんてことはありませんでした。
場合によっては何日も食べられないようなこともあったでしょう。
なので、獲物を捕まえたときは、いつまた食べられるかわからないので、大量に一気食いをします。
犬は今もその性質を受け継いでいるので胃が大きく、一度に大量の食事を食べることができます。
ただし長年人に飼われて規則的に食事をもらってきたことで、能力はあっても大量に食べると不具合が起こりやすくなっているのです。
食事の回数はずっと同じではなく、ライフステージによって変えていく必要があります。
ペットショップで子犬を購入した飼い主さんは、食事回数を1日2回にしているケースによく遭遇します。
ペットショップでは管理の都合上、子犬でも食事の回数を1日2回にしていることが多く、飼い主さんにもそのままの回数を指示するからです。
しかし、発育期はこちらの記事で紹介したようにとても多くの栄養を必要とします。

必要な栄養量を1日2回で摂ろうとすると、まだ小さな子犬の胃には負担が大きすぎます。
きっと食後は胃がパンパンで見た目にお腹が張っているのがわかるくらいになるでしょう。
このような状態では、食べすぎて吐いてしまったり消化不良から軟便や下痢の原因になってしまいます。
消化器への負担を減らすために、子犬では3~4回に分けて与えるようにしましょう。
小型犬ではさらに回数多めでもいいくらいです。
僕らの世代の子供時代には、飼い犬の食事は1日1回が普通でした。
その習慣は今も根強く、ワンちゃんの食事を1日1回にしている飼い主さんはけっこういます。
ですが成犬でも子犬と同じように、1日1回だと1回の食事量が多く、胃が大きくなりすぎて問題が出やすくなります。
子犬時代の食事回数は成長にともなって減らしていくべきですが、成犬になっても1日2回には分けて与えるようにしましょう。
昔のワンちゃんはフィラリアや伝染病などで若くして亡くなる子が多かったのですが、予防が普及した近年は寿命が伸びて15歳くらいまで生きるのが普通になりました。
長生きになったのは喜ばしいことなんですが、その分、老化に合わせてフードの種類や回数などにも気を使ってあげないといけません。
消化機能は歳とともに衰えていきますので、食事回数が1日2回では胃腸のキャパを越えてくるようになります。
老犬になって明らかに衰えてきたら、3回程度に分けて与えることをおすすめします。
ライフステージに関わらず、日頃から軟便気味でお腹の弱い子の場合は、一般の食事回数だと1回の量が多すぎるかもしれません。
消化器への負担を減らすために1回量を減らして通常よりも回数を1~2回増やしてあげると、便の状態が良くなることがあります。
いつも便がゆるくてお困りでしたら一度試してみてください。
普段からお腹がゆるい場合はフードが合っていないことも良くあります。
回数を増やして改善がなければフードを変えてみるのもいいかもしれません。
下痢がひどい場合やフードを変えてもダメな場合は、何か隠れた原因や病気があるかもしれません。一度病院で調べてもらいましょう。
ドッグフードのパッケージの表示には、体重毎の1日のフード量の目安が記載されています。
しかし、食事の量は食事回数以上に個体差があるものです。
- 散歩の時間
- 同居犬の有無
- 遊びが大好きな活発な子なのか?いつもおとなしい子なのか?
などで消費するカロリー数は変わってきます。
当然、必要とするドッグフードの量も変わってくるので、パッケージの表示を目安にワンちゃんの状況に合わせて適宜増減してあげる必要があります。
活発なワンちゃんには表示よりも多めに、おとなしいワンちゃんには表示より少なめから始めてみましょう。
当初は、ワンちゃんの体重に合わせてパッケージに書かれた量を目安に、活動性に合わせて増減した量を与えてみましょう。
もし、すぐに食べ切って物欲しそうにいつまでも器から離れようとしないのなら、その子には量が少なすぎます。
反対に、フードを残してしまったり食べ切るにしてもいつもより時間がかかるようなら、量が多すぎるサインです。
その時点で量を足したりせずに、次の回から少し加減した量を与えてみましょう。
その場で足してしまうと次々に催促して、適切な量を見つけることができません。
必ず次回から増やしていくようにして、その反応を見ながら判断しましょう。
微調整を繰り返して、最終的にすぐに食べ切って器に執着しない量を見つけてください。
Dr.ノブ
1週間毎に給与量を調節するようにしましょう。
上記の方法と並行して、便の状態や脂肪のつき具合での評価も行なってください。
増やしてすぐの便の状態
ドッグフードを増やしてから便がやわらかくなったという場合は、フードの量が多すぎる可能性が高いです。
すでに成長に十分な栄養を摂れるだけの量を与えているのなら、1段階フード量を減らしましょう。
もし、便がやわらかく、かつ体重の割に食べている量が少なすぎるのなら、1回量を増やすのではなく食事回数を増やしてみましょう。
ただし、この場合は1回量は少し減らし食事回数を増やして、1日のトータル量が少し増える量に調節します。
脂肪の付き具合
ドッグフードの量が決まったら、しばらく一定量を続けてから体重の変化をチェックしましょう。
それとともに脂肪の付き具合を評価します。
脂肪の付き具合(肥満度)の評価にはボディコンディションスコア(BCS)を使って判断します。
5段階で以下の表のように分類して判定します。
BCS | シルエット | 判断のポイント |
---|---|---|
1 やせすぎ | ![]() |
肋骨:脂肪がなく容易に触れる 腰部:脂肪がなく骨格が見た目にわかる 腹部:お腹のくぼみが深く、極端な砂時計のようなシルエット 体脂肪率:5%以下 |
2 やせ気味 | ![]() |
肋骨:脂肪がごく薄く、容易に触れる 腰部:脂肪がごく薄く、骨格の形がわかる 腹部:お腹がくぼんで砂時計のようなシルエット 体脂肪率:6~14% |
3 理想体重 | ![]() |
肋骨:薄く脂肪に覆われて、触ることができる 腰部:なだらかな輪郭で少し厚みがあり、薄い脂肪の下に骨格を触ることができる 腹部:お腹のくぼみは浅く、適度な腰のくびれがある 体脂肪率:15~24% |
4 太り気味 | ![]() |
肋骨:中等度の脂肪に覆われて、触ることがむずかしい 腰部:なだらかな輪郭で厚みがあり、骨格をかろうじて触ることができる 腹部:お腹や腰のくぼみがなく、上から見るとわずかに広がっている 体脂肪率:25~34% |
5 太りすぎ | ![]() |
肋骨:厚い脂肪に覆われて触ることができない 腰部:厚みのある見た目で、骨格を触ることが困難 腹部:お腹は垂れ下がり、上から見ると横に広がっている。尾の付け根にも脂肪がついている 体脂肪率:35%以上 |
単純に体重が減ったからフードを増やし、増えたからフードを減らすわけではありません。
まず現在のワンちゃんのBCSを調べ、現在の状態がBCS3に向かっているのかどうかで判断します。
体重が減っていてもBCS3に向かっている(つまり今までBCS4やBCS5で太っていた)のなら、しばらく今のフード量を続ければいいし、体重が増えていてもBCS3に向かっている(つまり今までBCS2やBCS1で痩せていた)場合もそのままの量でいいのです。
以上のような評価を繰り返して、BCS3で安定するようにフード量を調節してください。
ドッグフードの量を微調節しようと思っても、同居犬がいると難しい場合があります。
食べるのが早い食いしん坊な子がいると、食べ終わった後に他の子の分を横取りして食べてしまうという悩みをよく聞きます。
力関係が同等なら食べている途中の子は譲らないので問題はないのですが、順位が下だと取られてしまったり、食の細い子だと最初から譲ったりする場合があります。
そんな時は、食べるのが遅い子が食べ終えるまで側についているか、部屋の端と端に器を分けて横取りしにくくするといいです。
それでもダメなら横取りされる方の子をサークルなどに入れて食べさせるか、別の部屋で与えるようにしましょう。
1匹が病気で療法食を食べないといけない場合に、健康な子が療法食を食べてしまったり、病気の子が一般食を食べてしまったりするという悩みもよくあります。
この場合も上記の方法で対処可能です。
フードの量や入れ替えには注意を払っていても、水の状態のチェックはおろそかになりがちです。
器に水が残っていても、食事ごとに水も入れ替えるようにしましょう。
特に夏場は食後に水を飲んだ時に入ったフードのカスで水が傷みやすくなるので特に注意が必要です。

フードの与え方は、ドッグフードのパッケージに記載された指示が絶対的なものではありません。
ワンちゃんによって消化の効率や消費カロリーは異なるものです。
食事の回数やフードの量は、始めは指示を目安にして、その後はワンちゃんの状況に合わせて調節しましょう。
一度回数や量が決まっても、体調で加減したりBCS3になるように微調整を行ってください。