最近は大半のワンちゃんが太り気味ですから、体重が落ちると喜ぶ飼い主さんが多いですね。
事前に肥満対策として運動を増やしたり、ダイエット食に切り替えていたのなら素直に喜んでいいことです。
しかし、これまでと同じ生活をしていて体重が落ちたのなら、何か問題が隠れている可能性について考えてみる必要があります。
この記事では、ダイエットしていないのに体重が落ちる原因として考えられることを解説しています。日頃の健康管理の参考にしてください。
目次
ワクチンやフィラリアで来院する健康なワンちゃんの体重を測定していると分かるのですが、個体によって体重の変動はさまざまです。
毎年、毎回、測ったように同じ体重を維持している子がいれば、増えたり減ったり1度として同じ体重にならない子もいます。
生活環境はそれぞれ違いますし、ドッグフードをいつも残さず食べる子もいれば、食べたり食べなかったりムラのある子もいます。
間食や人の食べ物をもらっている子もいるでしょう。
ある程度は体重の推移には個体差があって当然。
一般的には10%以内の変動は問題ないとされています。
Dr.ノブ
初期であったり体重がそれほど落ちない病気だってあります。
健康であっても10%程度の体重の変動はありえるという話です。
以前より体重が落ちすぎているなと思って飼い主さんによくよく聞いてみると
「そういえば以前にくらべて食欲は減っているかな…」
ということがあります。
毎日世話をしていると緩やかな変化はなかなか問題視できないもの。
後述するように高齢ならともかく、まだ高齢というほどでもないのに徐々に体重が落ちているのなら、慢性的な病気で食欲や代謝が落ちてきているのかもしれません。
摂取カロリーが以前より落ちてきているのなら、当然それに伴って体重は落ちていきます。
急な病気であれば、何らかの症状や急激な食欲・体重の変化に気づけるのですが、ゆっくりと進行する病気では見落としやすいのです。
このタイプの体重減少では
- 腎臓疾患
- 肝臓疾患
- 消化器疾患
- 慢性炎症
- 腫瘍性疾患
などいろいろな病気の可能性があります。
これまでと変わらずドッグフードをよく食べている、あるいは最近食欲がすごいなと思っていたのに、体重を計ってみると減ってしまっていることがあります。
こんなケースでは重い病気が隠れているかもしれません。
普通は食欲旺盛なら健康だと思いますから、意外な落とし穴です。
このタイプの体重減少には2つのパターンがあります。
しっかり食べて摂取した栄養を何らかの原因で失ってしまっているとだんだんと痩せてしまいます。
たとえば有名なのが糖尿病。
糖尿病では体のエネルギー源である糖分が肝臓や筋肉に蓄積されずに、尿へと排泄されてしまいます。
そのため体は飢餓状態になり、前よりも食べてたくさんの栄養を摂取しますが、だんだんと痩せてくるという矛盾したことが起こります。
最近すごい食べるのに痩せてきているように感じたら要注意です。
ほかには腫瘍でもこのパターンになることがあります。
腫瘍(ガン)は一般に苦しんだり痛がったりするものという先入観がありますが、腫瘍のできる場所によってさまざまな経過をたどります。
場所によっては普段と元気も食欲も変わらずに過ごしていることも。
だけど栄養を腫瘍に取られてしまうので、徐々に体重が落ちてしまいます。
腫瘍があっても症状があらわれるとは限らないので注意が必要です。
ほかに腸からタンパクを失うタンパク喪失性腸症もあります。
消化器に問題があると栄養が十分に吸収できないということがあります。
せっかく食べたフードもたくさんの栄養が残ったまま便に垂れ流してしまうため、徐々に痩せてくることに。
このパターンは腸の機能そのものに異常のある吸収不全や膵臓の分泌機能が低下している膵外分泌不全で起こります。
Dr.ノブ
10%を超える体重減少があったとしても、ワンちゃんがすでに14、15歳という高齢なら異常とも言えないかもしれません。
人間だって老人になってくると普通は体重が落ちてくるものです。
一般状態は変わりなく、ゆっくりと体重が減っているだけなら心配はないでしょう。
しかし、この年代は何かとガタがきているもの。
できれば定期的に健康診断を受けるのが理想です。
日頃、食欲やウンチ・オシッコの状態には目を光らせて健康管理をしている方でも、定期的に体重を計っている人はあまりいないでしょう。
ワンちゃんは毛に覆われていますし毎日見ているものですから、痩せたり太ったりの体重変化にはなかなか気づかないものです。
体重チェックも健康管理の1つと考えて月に1度くらいは計って見ましょう。