昔の人は「猫にイカを食べさせると腰が抜ける」と言ったものですが知っていますか?
これはけっして迷信ではなく、実際に食べさせて腰が抜ける猫がよくいたから言われるようになったことです。
腰が抜ける原因はビタミンBの一種、チアミンが欠乏してしまうことで起こります。
このようなことは猫だけの話でなく犬に起こることもあるんですよ。
この記事では、チアミン欠乏症の症状についてとイカなどの魚介類を生で与えるとどうしてチアミンが欠乏してしまうのかについて解説しています。
ビタミンBにはB1,B2,B6,B12などがあり、このうちビタミンB1がチアミンです。
チアミンは糖質の代謝に欠かせない物質で、糖がエネルギーに変化するときに補酵素として働く重要な役割を果たしています。
チアミンが不足しているとこのエネルギーへの変換がうまくいかなくなる、つまり、いくら高品質で栄養価の高いフードを食べさせていてもうまく栄養を使えなくなってしまうわけです。
また、チアミンは神経の働きにも影響していて、脳などの中枢神経や手足の末梢神経が正常に働くのに必要なビタミンでもあります。
そのためチアミンが欠乏してくると
- 食欲減退
- 体重減少
- 疲れやすい(倦怠感)
- 突発性神経炎
- 痙攣(けいれん)
などが起こってきます。
”猫の腰が抜ける”というのは、神経の障害によるものなのです。
若い人は知らないかもしれませんが、昔の人(特に江戸時代)は脚気(かっけ)という病気によくなりました。
膝の腱を叩いて反射が起こるかで判定する病気として有名なのですが、この脚気がまさにチアミン欠乏症のこと。
チアミンは米の胚芽部分に多く含まれていて、白米を食べる習慣が普及してから脚気になる人が続出したそうです。
現代ではあまりありませんが、偏った食生活をしている人やお酒をたくさん飲む人はチアミン不足になりやすいといわれています。
チアミン欠乏症は猫で起こりやすいですが、犬でもなることがあります。
総合栄養食のドッグフードを常食としているワンちゃんでは、チアミンが欠乏することはないですが、トッピングに生のイカ・タコ・エビなどの魚介類を食べさせると急激にチアミン欠乏症になって神経症状が出てくることがあります。
なぜ?これらの魚介類を生で食べさせるとチアミン欠乏症になるのか?
実は、生のイカ・タコ・エビなどにはチアミナーゼというチアミンを壊してしまう酵素が含まれています。
なので、食事から十分なチアミンを摂取していたとしても、これらの食品を一緒に食べてしまうことでチアミン不足に陥ってしまうのです。
チアミナーゼを含む食品にはイカ・タコ・エビの他には
- アワビ・ハマグリなどの貝類
- コイ・フナなどの淡水魚
- イワシ・サンマ
- ワラビ・ゼンマイ
などがあります。
Dr.ノブ
トッピングをせずにドッグフードだけを食べさせていればチアミン欠乏症になることはありません。
しかし、愛犬の食生活を豊かにしてあげたいという方もいるでしょう。
チアミナーゼを含む食品を使う場合は加熱をしてください。
チアミナーゼは熱を加えることで活性を失うので、魚介類で手作り食やトッピングをするのであっても、加熱して与えれば大丈夫です。
犬に脚気って意外に思った方も多いんじゃないでしょうか。
最近は手作りやトッピングが普及しているので、チアミン欠乏症は要注意です。
神経症状までいかなくても、食欲減退や元気がないというのはひょっとしたらチアミン不足になっているのかもしれませんよ。
魚介類の生食に心あたりがあるのなら今すぐやめるようにしましょう。