ドッグフード関連のサイトを見ていると、犬は穀物を使っているフードは消化が悪いからダメとか、本来肉食だから肉中心のドッグフードでないとダメという記述を目にします。
穀物に関してはまだ言わんとすることは分かります。(でも消化が悪いことはなく、問題になるのは一部のアレルギーを持つ子だけです)
では、肉中心の食事にするべきというのはどうでしょう?
雑食に変わってきている犬は、今なお肉さえ食べておけばいいのでしょうか?
Dr.ノブ
タロ
目次
雑食性に変わった犬について考える前に、野生の肉食動物のことを考えてみます。
ライオンやトラに代表される肉食動物が獲物を倒した時、まず食べ始めるのはどこからか知っていますか?
相手が小動物でもない限り、やわらかいお腹の部分から食べていきます。
ライオンの狩りのシーンを一度は見たことがあると思いますが、まず首を狙って窒息死させたら、お腹を食い破って内臓を食べます。
ライオンが獲物のお腹のあたりに顔を突っ込んで血まみれになっているシーンに見覚えはないですか?
この時、腸とともに直前まで草食動物が食べていた半分消化された草も一緒に食べているのです。
肉食動物は草を消化する酵素を持っていないので、草を直接食べても栄養として利用することができません。
しかし、草食動物の内臓ごと食べることで半消化された草+消化酵素を摂取することができ、消化し栄養として利用することができるようになります。
肉食動物が内臓をまっさきに食べるのは、そこに必要な栄養が詰まっているからです。
炭水化物(糖質と繊維)はほぼ植物からしか得ることができません。
そして肉食動物でも健康な栄養バランスのためには炭水化物は必要です。
また、ビタミンやミネラルなど主に植物からしか摂取できない微少な栄養素も多くあります。
肉だけでも生きてはいけますが、いろんな栄養素が欠乏してきます。
上は犬と猫と人間の必要な栄養バランスを円グラフにしたものです。
完全な肉食である猫でも4割以上の炭水化物が必要です。
長年人間に飼われて雑食へと変わってきた犬では6割以上とさらに多くの炭水化物が必要になります。
つまり肉食動物でさえ植物は必要で、雑食へと変わった犬はより多くの植物が必要ということです。
Dr.ノブ

実際に市販されているドッグフードをチェックすれば、総合栄養食で植物(野菜や穀物)を使っていない商品はありません。
なぜなら、野菜や穀物を使わずに総合栄養食として認められる栄養バランスを実現することは不可能だからです。
手作りフードを与える場合も、どんなレシピを見ても野菜や穀物を使用しています。
肉のみで健康なフードづくりはできないのです。
犬は雑食になっても、生の植物を消化するのは相変わらず苦手です。
それが穀物を使ったドッグフードは消化が悪いと叩かれる根拠になっています。
しかし、ドッグフードにしろ手作り食にしろ生のまま穀物や野菜を与えることはありませんよね。
野生の肉食獣が内臓ごと半消化の植物を食べるように、ドッグフードでは加工により非常に吸収率の高い状態なっていますし、手作り食では熱を加えることで消化しやすくします。
生で与えているわけではないので、消化に悪いという心配はまったく必要ないのです。

これまで書いてきたように、愛犬には必ずしも肉中心のフードを与えないといけないというわけではありません。
実際に、世に出回っているドッグフードは穀物類が多いものから肉類が多いものまでその比率はさまざまです。
アレルギーの体質がないのなら、一般の家庭で飼われているワンちゃんではどんな比率ものを与えても問題はないでしょう。
でも、アジリティーをするワンちゃんや猟犬、闘犬など、運動能力を最大限に要求されるワンちゃんでは、力強い体を作るために動物性タンパク質が豊富なフードを与える方がベターです。
また、ワンちゃんは肉中心のフードのほうを好んで食べる傾向があるので、食いつきが悪いワンちゃんでも動物性タンパク質の多いフードのほうがいいかもしれません。
製品に肉を多く使っているのを売りにしているメーカーがある一方で、逆に穀物類を多用しているのを売りにしているメーカーもあります。
それぞれのメーカーで言っていることが違っていて、いったいどっちが本当なの?と迷ってしまいますよね。
今回の記事をまとめますと、
- 穀物でなくてもいいけど植物由来の栄養は必要
- 必ずしも肉中心のフードである必要はない
ということになります。
肉の割合がどれくらいがいいのかはワンちゃんの体質や必要とされる運動能力によって変わってきます。
答えは一つではなく、その子にあったフードはそれぞれ違います。
愛犬にピッタリのドッグフードが見つかるといいですね。